木ノ葉隠れ創設編
-千年前の予言-
ダンゾウはカガミらと共に任務に熱心に精を出しているようでセンリと顔を合わせる機会は少なかったがそれでも陰ながら応援はしていた。
火影室で今月の任務状況や里の情報確認をしている最中、マダラは一つの書類を手に取って神妙な顔をしていた。
「“女風呂の覗き事件”……また自来也だな」
またか、と言いたげに眉を寄せてため息を吐いていると任務報告に来ていたヒルゼンが申し訳なさそうな表情をした。
「申し訳ありません…。オレも言い聞かせてはいるのですが……」
しかしその様子を見ていたセンリはくすくすと笑った。
『だってヒルゼンも同じ事してたじゃない』
「そ、それを言われてしまうと何も言い返せません…」
今の自来也と同じ位の歳の時のヒルゼンは一度覗きの現行犯で捕えられていた。ヒルゼンはその時の一回で懲りたようだが自来也は違うようだった。
「サルよ、さすがはお前の弟子だな」
扉間はそこまで問題視していないようで、面白そうに笑っていた。
「他の二人はどうなんだ?」
問い掛けたのはイズナでヒルゼンは話題が逸れて安堵したようだった。
「綱手も大蛇丸もすでに並の忍より見込みがあります。あれは将来相当強い忍になりますでしょう」
そう言うヒルゼンは何処と無く自慢げだった。
「綱手は柱間以上の忍になるとは思えんがな」
マダラは書類を整理して扉間の机にドンと音を立てて置きながら言う。そうは言っていたがマダラも綱手達には僅かながら期待をしている事をセンリは知っていた。
『それは分からないよ?綱手は特に細かいチャクラコントロールが上手いからね。多分医療忍術とかやってみたらすぐに上達すると思うよ。それから力もあるし』
センリはこの間綱手が自来也を殴り飛ばしているところを思い出して笑った。
「センリ様はよく綱手を見てくれていますね。綱手もセンリ様の話ばかりしていますよ。“姉のように思っている”と」
『本当に?嬉しいなあ。私も綱手と遊ぶの楽しいからな!千手家の養子になろうかな?』
「ダメ」
「駄目だ」
イズナとマダラの声が重なる。扉間とヒルゼンは楽しげに口角を上げていたが、特にイズナは盛大なしかめっ面だ。
『じゃマダラとイズナも千手一族に籍を入れちゃう?――――いや、冗談だよ…』
写輪眼になりそうな勢いでいる二人を見てセンリは苦笑いした。
最近の楽しみは綱手と共に縄樹と遊んだり、共にミトのところを訪れる事だった。それをよく知っているヒルゼンはセンリには感謝していた。
「それにあの口数が少ない大蛇丸も…センリ様の事となると興味深そうにするのです。本当にセンリ様は子ども達の心を掴んでおりますね」
「あの大蛇丸が、か……お前、何かしたのか?」
大蛇丸は実力があるが口数も少なく表情の変化も乏しいので不気味な印象を抱いていたマダラは、眉を寄せてセンリを見た。
『ううん、何もしてないよ。数年前に一回会って話した事があるだけ』
「まあ、そんなところだろうな」
マダラは一人納得して頷いた。
『よし……じゃあ私はこれから綱手と会う約束してるからちょっと行ってくるね』
センリは自分が見ていた巻物をクルクルと回してポケットにしまい込んだ。この後は綱手とミトのところに行く約束をしていたのでセンリは少し急いで後片付けをした。
幼い頃からセンリに親しみを込めながらも尊敬していたヒルゼンは、今自分の弟子達とセンリが自分達の関係のようになってくれて有り難さを感じていた。
センリの言葉や笑顔には人を元気にしてあたたかく包み込んでくれるような不思議な力がある。それを側で受け止められる弟子達も自分も、幸せだと感じていた。
「兄者もあの世で喜んでいるだろうな」
扉間が誰に言うでもなく呟くとヒルゼンも深く同意した。
「まあ姉さんは昔から子どもが好きだから」
イズナは巻物を二つ同時に広げてそれから目を離さずに答えた。センリの子ども好きは今に始まった事ではないし、それによって救われた事も多々あった。今ここで自分が火影の側近として働いているのもセンリのお陰だとイズナは思っていた。
ふと窓の外を見ると商店街を駆けていくセンリの後ろ姿が見えて静かに微笑んだ。
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