木ノ葉隠れ創設編

-火影と側近-


後日、千手柱間が里の長に就任するという号外を出すと、里の者達も一族の忍び達も皆が賛成し、認めた。休戦を望んでいたのは千手一族の長だというのは他の者も噂で聞いて知っていた。それほどまでに柱間の存在は誰しもに尊敬され、認められていたのだ。反対する者はいないに等しかった。


崖下すぐに火影の為の建物を新たに建て、里を見渡せるようにその最上階に火影室をつくった。火の国では有名な大工が設計を手掛けたようでセンリが受け取った巻物は細かく設計図が描かれていた。センリはその通りに建物を創り出し、細部の構築はその大工が担当した。


それが終わるとセンリの提案で、火影就任の式を里の者達にも見せる機会をつくるということで盛大に式が行われた。柱間の火影就任式だ。


センリと大工が創った火影邸の屋上でそれは執り行われた。十二月に入ってすぐの、よく晴れた寒い日だった。


予め頼んでおいた火影の羽織を柱間が着て屋上に立つ。集まった多くの里の者達が地上から期待の表情でそれを見上げている。ざわめきが屋上まで聞こえてくる。

火影の笠を柱間の頭に被せる役目をセンリが遂行することになった。柱間たっての希望だった。


センリが屋上の先で火影の菅笠を持ち、柱間がやって来るのを待つ。扉間とマダラは屋上の端の方でそれを見守っていた。柱間が現れるのを里の者達も固唾を呑んで見守る。柱間はゆっくりとセンリに近付く。センリは微笑んでそれを待つ。柱間はそこまで到着すると、センリに向き直った。


『火影就任、おめでとう』


センリが笠を持ち直し微笑むと柱間も笑みを返し、そして腰をかがめて頭を下げる。センリは“火”と描かれた火影の菅笠をその頭にそっと被せる。赤い羽織は柱間によく似合っていた。傘を被った柱間が民衆の方を向けば集まった多くの人々からワアア、という心臓に響く程の拍手と歓声が湧き起こった。それは柱間がみんなに認められた火影だということを表していた。

民衆に混じってミトと浅葱、それからイズナの姿が見えた。イズナも仕方なしにと言った様子だったが拍手を送っていた。


ふと、センリは後ろを振り返る。マダラは腕を組んでその様子を穏やかに見ていた。センリはいいことを思いついたというふうに柱間にニッコリして後ろにいるマダラの所まで行き、その手を取った。


「!」


マダラが何事かと驚いているとセンリはその手を引っ張って柱間の隣まで移動させた。マダラは抵抗はしなかった。柱間の隣まで連れてくると、センリはマダラの背中を押した。マダラが眉を寄せて背を押すセンリを見たが、センリは微笑んだだけだった。マダラは地上にいる観衆を見下ろす。二人が並べば拍手喝采はさらに大きくなった。後ろからその様子を見て扉間も微かに微笑みを刻んだ。


不思議な気分だった。これまでに経験したことの無い気分だった。自分たちを見上げ、崇め、称えるような視線で拍手をする人々。うちは一族の者も、弟もいる。隣には友もいる。そして背中をいつも押していてくれるのは何よりも大切な人。胸の奥がむず痒いような、嬉しいような気恥しいような、それでいてマダラの心臓は熱く脈打っていた。


センリは二人の大きな背中をただ見つめた。二人は認められたのだ。そして今、共に同じ方向を見つめている。これまで何度も願った。それを望んで生きた。何度もすれ違った二人が、今、ようやく同じ場所に立っている。


『(ハゴロモ………これからも私は、ずっと見守っていくよ。どんな事があっても)』


長く続いた戦乱を終結に導いた三人の姿は人々の心に固く、強く刻まれていた。

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