- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-扉間とイズナ、大蛇の子-


里に新しい命が誕生してそれを胸に抱いてを繰り返していると、里の大切さを改めて実感する。

新しい命の誕生に目を輝かせているとすぐに次の世代が追い抜いていく。

失った里の仲間と同じくらいにセンリは新しい仲間も大切にしていた。



そうして毎日過ごしていたが、その年の里の冬の様子はセンリが見て分かるくらいに違っていた。

毎年十一月末になるとセンリは欠かさず、ヤヨイの甘味処のもみの木に飾り付けをしていた。この作業も何度繰り返したか分からないが、ヤヨイは大層気に入っていてもみの木も二本目だった。

向かい側の雑貨店にも同じような木が飾られているのを見てセンリは疑問に思っていた事をヤヨイに問い掛けた。


『ねえ、ヤヨイちゃん。クリスマス……えっと、私が前に話したお祭りのこと広めてくれてるの?』

業務を終えたヤヨイはセンリの問い掛けにウンウンと頷いた。


「はい!余りにも素敵なお祭りだったので。この木を飾っているとお店に来る人が不思議に思って聞いてくるので“センリさんの為のお祭りなんです”って答えて説明してるんです!」


ヤヨイはさぞ嬉しそうに言ったが、センリは苦笑いをした。


『私の為じゃあないでしょ!私の事称えてもどうにもならないよ』

「センリさんは里にとっての大切な人じゃないですか!それを前にみんなで話してて、“輪廻祭”って勝手に名前をつけてみたんです」


ヤヨイはそれがよほど嬉しいようだった。


「そしたらだんだん最近こうやって木を飾ったりする人達が増えて来たんですよね。今年は特に!」

確かに今年は特に商店街の店先で、センリが飾り付けをした木を真似た植物や植木を見掛けていた。昨年まではそうでもなかったが、今年は一気にそれが浸透したようだった。


『そっかあ。でもこうして里のみんなで何かお祭りを出来るって楽しいよね。ヤヨイちゃんも誰かにプレゼントとかあげてみたら?』


センリがヤヨイを小突いて言うと彼女は言葉を詰まらせた。


「うう…それを言われると…プレゼントを渡せるような男の人はいませんし…」

『家族にだっていいんだよ』


ヤヨイは幼い頃一目惚れした初恋の相手にまだ出会えてはおらず、三十半ばを過ぎてもまだ青い春は訪れていないようだった。


「最近父も足腰弱ってきてるからマッサージか何かしてあげようかな…」

『ふふ!それいいね!きっと喜ぶよ』


少し元気を取り戻したヤヨイに手を振ってセンリはミトの家へと向かった。

ミトは相変わらずクラマを強い封印術で押さえつける事に成功していたがここ最近で随分老いたようだった。孫がいる身としては当たり前の事だが、以前のように外に出て行動せずに家でのんびりしている事が多かったのでセンリも度々家を訪れていた。


『ミト!ヤヨイちゃんとこのお団子買ってきたよ〜』


センリは玄関を開けずに直接庭がある縁側に向かうとミトはそこで座って茶を飲んでいた。今日は晴れていてそこまで寒くないので、日の光を眩しそうに見上げながらミトが微笑んだ。


「いつもありがとう、センリ。飾り付けをしに来たのですか?」

『うん!見て、新しいリボンも買ってきたんだ〜』


柱間がいなくなってからは趣味の盆栽はミトが世話をしていた。毎年この時期になるとセンリはその一つに飾り付けを施すのだ。


『商店街もカラフルになってたよ!今度一緒に見に行こうよ』

「そうですね。このところ外出していないから……次に晴れた日があったら一緒に行きましょう」

年を取ってゆっくりになった口調に、センリは笑顔で頷いた。


「センリのお祭りがだいぶ浸透してきましたね」

『そうみたい!輪廻祭、とかヤヨイちゃんは言ってたけど……』

ミトはなるほど、と言って笑った。


「輪廻という言葉には繰り返すという意味も含まれているから、良いのではないですか?これから何度も続いていくように」

『あ、そっか!確かに。いいこと言うねミト!』


喜び始めるセンリを見て、四十代も半ばに差し掛かったミトは幾分か多くなったシワを深めて楽しそうに笑った。


変わりゆく時の中でマダラとイズナとの関係だったりミトや友人との関係が変わらないのはセンリにとって生きた宝のようなものだった。
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