- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-扉間とイズナ、大蛇の子-


カルマの言った通りセンリの変化の術は三日で解けた。何故解術出来なくなってしまったのかはカルマにも分からないが、センリの力を制御している呪術が何らかの形で作用してしまったのだろうとカルマは結論を出した。

一生解けなくなるという事にはならないと踏んでいたが、それでもセンリが元の姿に戻ってマダラは一番嬉しそうだった。



「やはりセンリはこの姿でなければな」


火影室でさぞ嬉しそうな顔をするマダラを見て、センリはこの後の未来を想像し、苦笑いをした。


『あ、あはは……あっちの姿でも良かったんだけどね』

「姉さんは楽観的すぎる。男の姿のまま戻らなくなったらどうするんだよ」


男の姿のセンリを見た訳ではなかったが、イズナは少々呆れてセンリに言い聞かせた。


「お前はこの間もオレが編み出した影分身の術を訳の分からん助平忍法に変えていたしな。やる事が幼稚だな」

『違うよ!あれは陽動としてちゃんと実践でも使えるよ!ヒルゼンだってダンゾウくんだって引っ掛かってたんだからね』


扉間が若干小馬鹿にして言うのでセンリはきちんと言い返した。

影分身は扉間が考案した忍術で、変わり身の分身体ではなく実態に近い分身を作り出せる術だ。この前の久しぶりの修業の時にそれを使って変化をしてグラマーな女性に代わり相手の隙をつくという、センリが懸命に考えた結果の賜物だったが何故か扉間には受けなかったのだ。


『あのおいろけの術にはまらなかったのは、今のところマダラくらいだからね…』


あの術を繰り出せば大体の忍は驚いて隙が出来るのだが、マダラは隙が生まれるどころか、一瞬も表情を変えずに魅惑の体をした女性を火遁で焼き尽くしたのだ。それを思い出してセンリはため息を吐いた。


「あんなものに引っ掛かるのは馬鹿だけだ。どうせやるならただの影分身でやれ」


センリ自身があられもない姿で現れれば少しは動揺するのにと思ってマダラは言ったが、当の本人は理解していないようだった。


『ただの影分身だと意味が無いんだよ!……うーん、もっと何か捻りが必要だな…』


まるで意味が通じていないセンリを見てマダラはふっと鼻で笑った。


「まあ、とにかく元に戻ってよかったよ。じゃあこれ、警務部隊長のところにお願いしていいかな」

『オッケー!じゃあ行ってくる!』


センリはカガミの父に渡す資料を受け取り、警務部隊本部まで届ける為に火影室を出ようとした。



「センリ、大至急で渡して来い」


マダラの声に振り返るが、センリはその笑顔を見て顔を引き攣らせた。



『わ、分かりました……』


引き攣った顔のままセンリは何とか笑顔を絞り出し、そのままそーっと火影室を出た。マダラは最後まで微笑んでいた。



「兄さんてば。随分姉さんの男の姿が嫌だったみたいだね」

「当たり前だろう。本当に災難だったんだぞ。センリはよくよく説教してやらんとな」

「中身は姉さんなんだから………まあボクは絶ッッ対嫌だけど」


心からの拒否の言葉をイズナが言うので、思わず扉間は口角を上げた。今頃センリはくしゃみの一つでもしているかもしれない。


「だが女の姿のマダラは中々美人だった。センリも言っていたろう」


どことなく面白そうな声音で扉間が言うので、マダラはキッと睨み付けた。


「なるほど……。姉さんが二人、か。それは確かに少し、見てみたかったかも」


イズナまでもが同調するので、ますますマダラは顔をしかめた。


「扉間……それ以上喋ったらここで須佐能乎を出すぞ」

「それは困る」


扉間は苦笑したが、マダラならやりかねない気がして、それ以上の言葉を呑み込んだ。


「センリ姉さんのその術は、これから禁術に指定した方がいいな」



マダラの殺気を気にしていないイズナが冗談ぽく言う。そしてその言葉にマダラは心から同意していた。まずは何としてもセンリに分からせる事が最優先だった。
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