木ノ葉隠れ創設編
-扉間とイズナ、大蛇の子-
マダラにしても柱間の側近として共に仕事していた時よりも忙しく働き回るという事は少なくなった。弟の様子が心配になる事もあったがイズナももう自分の事は自分で十分こなせる。たまに火影室を覗いて見ても特に扉間と衝突している様子はないし、何だかんだ里の為に尽くせる事が嬉しいようだ。
しかしそれでも里内の事にしてもそれ以外の事にしても、考える事ややらなければならない事はたくさんある。
扉間とイズナが火影室で執務をこなしている時でもノックをしないのはマダラだけで、突然戸が空いたと思ったらいつもそこに立っているのは見慣れた黒い姿だった。
その日もいつものように突然戸が開く音がして、マダラだとは分かっていた扉間は念の為チラリと目だけを目の前に移し、そして二度見をした。
「……」
マダラの後ろについて火影室に入って来たのは見た事のない男だった。
すらりとしたその立ち姿は芯が真っ直ぐで、高身長でなければ女と見間違える程美しい顔をした男だった。むしろその辺りの女より綺麗かもしれない。世の中の女性が虜になる、というのはこういう男なのだろうな等とふと思ったが、その男に全く見覚えが無いので扉間は疑問を抱いた。
「…見慣れない顔だな」
マダラが近付いて来る前に扉間が問い掛けた。マダラは後ろの男を一度振り返って見て、また扉間に視線を移した。
男が一歩踏み出してマダラの隣に立つと長い銀髪がさらりと揺れた。ふと、兄と同じ位の身長だなと扉間は考えていると男の形の良い唇がふっと動いた。
『いや、扉間くん。私はセンリなんだ』
扉間は、文字通り絶句した。
今、目の前のこの男は何と言ったのか?訳の分からない言葉を何とか理解しようと、頭の中で繰り返す。しかし、全く持って意味が分からなかった。
『変化というか……ちょっとした手違いで術が戻らなくなっちゃって』
男にしては高い、しかし聞いていて心地の良い声が未だに状況を理解出来ない扉間の耳を掠めていく。
センリだと宣った男が困った様な表情をしてマダラの方を見る。マダラは睨むようにその視線に応えた後盛大にため息を吐いた。
「…一体どういう事だ?」
眉間にしわを寄せ、理解出来ないという表情を浮かべている扉間を見てマダラが二度目の息を吐く。
「こいつが変化で男に変わったんだが、その術が解けなくなった。お前なら何か解術方法が分かるのではないかと思ってな…」
扉間はその言葉を完全に理解出来てはいなかったのだが、しかしそれでも確かに目の前の男が先程笑った時に、確かにセンリの面影を感じたのだ。
あのマダラが言うのだから目の前の男はセンリで間違いは無いのだろう。しかしそれにしても何故そんな事になったのか扉間は不審に思った。
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