木ノ葉隠れ創設編
-木ノ葉警務部隊設立-
「おい、その薄汚い手を放せ」
センリが何とか首を動かして横を見ると、鋭い表情をしたマダラがこちらに向かって来ていた。
「ああん?誰だテメー。オレは今忙しーんだよ!邪魔すんなら殺すぞコラァ」
センリの首に手を回したまま威勢よく男が言い、その口から唾が飛んだ。マダラの事を知らない、という事は、忍ではない一般人だ。
マダラの表情が変わり、まずい、とセンリが思う間もなく、次の瞬間にはマダラの手が男の首を引っ掴んで店の壁に押し付けていた。勢い良く頭を壁に強打した男は「何すんだ!」と睨むようにマダラを見たがその瞬間に背筋が凍った。
「殺す、だと?それはこちらの台詞だ」
写輪眼では無いものの、忍でない人間でも震える程の殺気を放っているマダラのその腕をセンリが掴む。先程までの威勢は何処へやら、酔っ払いの男は今にも失禁しそうな勢いで震えていた。
『マダラ、放してあげて。怖がってるよ』
溢れ出る殺気もどうという事はないというふうにセンリが困った様に言えば、マダラの視線が一度その金色の瞳を捉えた後、ふ、と辺りを取り巻く禍々しさが消え去った。
「……次にこいつに少しでも触れてみろ。それがお前がこの世で見る最後の景色になるぞ」
「…っ」
最後に男の首を握る手にぐっと力を入れて念を押してからその首を放す。男はゲホゲホと咳き込み、涙目になってマダラを睨んだが、そのまま酒瓶を揺らしながら逃げるように去っていった。
『んもう。マダラはいつもやり過ぎだよ』
マダラと二人でいる時でさえ酔っ払いが絡んでくるという事は珍しくなく、それを殺気垂れ流しで威嚇する姿も見るのは初めてでは無いのでセンリはため息を吐いた。
「やり過ぎな事あるか。本当ならあのまま絞め殺しているところだ」
マダラが不機嫌そうな表情のまま呟く。まるで子どものようにも見えるその姿にセンリは苦笑した。
『あんまり乱暴したらダメだよ。……ほら、さっき私もお酒貰ったから、帰って呑もう』
センリが先程貰った焼酎を掲げるといくらか機嫌の直ったマダラと共に自宅へと向かう。
「しかし、最近になって街の治安が悪くなったな。一般人が増えた事が一番の原因だろうが…」
マダラの言う事は最もだった。暗い夜道を歩きながらセンリもうーんと考えた。
『酔っ払った人達の騒ぎも多くなったしね。それだけならまだいいけど、それがもつれて殺傷事件だとか、ご近所トラブルで相手を殺しそうになった…とかもたまにだけど聞くからね。困ったね』
最近の里の人間達の好放題には忍達も呆れていた。里が賑やかになるのはいいが、その分きっちりとルールをつくらなければならないようだった。
[ 145/230 ][← ] [ →]
back