- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-木ノ葉警務部隊設立-


しかしそれから里が繁栄するにつれて問題もいくつか起こるようになった。


商店街の店は里が出来た当初の何倍にも増え、仕事終わりの夜には呑み会をする者達で賑わうようになったが、その中では毎日のように騒ぎが起こっていた。


その日の夜もセンリは一人の忍から伝令を受けて夜の商店街へと足を進めていた。

店の前の人集りをかき分けて現場に到着すると二人の男が睨み合っていて複数人がそれを何とか押さえつけているという状態だった。二人の服が何ヶ所か破れ、殴り合いでもしたのかどちらも顔から出血していた。報告にきた忍がいうには術らしき閃光も飛び交っていたという。


『ちょっと二人とも、一体どうしたの?』


センリがそこに駆け寄って声を掛ける。二人は睨み合ったままだったが押さえつけられて動こうとしなかったのでどうやら修羅場は過ぎたようだった。


「オレ達が駆けつけた時には二人が殴り合ってて…何があったかは…」


一部始終を目撃していた忍がセンリに説明をした。センリに連絡を寄越したのはその忍で下忍だった為どうしたら良いのか分からないようだった。


『そっか、ありがとうね。……二人とも、落ち着いて』


センリの登場で気が紛れたのか二人の体の力が抜けたので押さえつけていた者はその手を離した。


『他に怪我した人はいないね?とりあえずみんなは家に帰っていいよ。もう遅いからね…ほらほらあなたも』


野次馬の群衆の視線は二人の感情を昂らせる原因になるのでとりあえずセンリは辺りの人間を散らせた。


『こんなに傷だらけにして…何があったかは分からないけどこんなところで暴力はよくないよ』


センリが二人に向かって言い聞かせるように言うと二人はいくらか落ち着きを取り戻した。

傷の手当をしてから二人を別々に帰して一段落ついたセンリは店の亭主に謝りに行った。センリの事をよく知る亭主で店で騒ぎを起こされ怒るどころか「センリさんも大変だな」と焼酎をいくつか貰ってしまった。

袋に入った焼酎を揺らしながら火影邸にいるであろうマダラのところへ戻ろうと商店街を歩いていると道の向こう側から男が声をかけてきた。


「うお!めちゃくちゃ良い女じゃねーか!おいおい、べっぴんさんよぉ、オレと一杯呑もうじゃねーかあ!」


酔っ払いだ。
酒瓶を片手にふらつきながらセンリの元に千鳥足で近付いてきた。夜の商店街を歩いているとこうして酔っ払いに絡まれる事は良くあったので軽く足らって家に帰るよう促そうと思ったが、今回はどうやらかなり運が悪かったようだ。


『一杯呑むのは自宅に帰ってからにしたほうがいいみたいだね……。ほら、お家はどこ?』

「はあぁぁ!近くで見るとほんとーに美人だなあんた!人形みてーだ。そんなかてーこと言ってねえであんたもオレんちに来て一緒に呑んでくれよー、なあなあ」


酔っ払いは酒瓶を持ったままセンリの話に耳のひとつも傾けず、首に手を回して強引に連れて行こうとした。


『おっと……悪いんだけど、私はこれから行かなきゃならないところがあるんだ。随分飲んでるみたいだけど、大丈夫?』


男の口からは鼻をつまみたくなる程のアルコールの臭いがしていたがセンリは極めて穏やかに言った。しかし男はセンリを家に連れ帰る気満々で、首が締まるほどの勢いで迫ってくる。


「ケチケチすんなよー!あんたみたいな上玉がこの里にいるなんて、やっぱりあんなチンケな村からは引っ越してきて良かったぜ。わりー事は言わねーからとりあえず黙って着いてこいって!」

『ちょ、ちょっと待って、』


余りにもしつこいその姿に道行く者達は立ち止まり、止めに入ろうとも考えていたようだったが、それよりも前に見慣れた声がセンリの耳に入った。
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