- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-二代目火影-


扉間が大名に里への軍資金を上げるよう交渉したお陰で木ノ葉の霊園も綺麗に整備され、木ノ葉の紋を象ったモニュメントが置かれた。

柱間の遺体は霊園とは別の場所に土葬されているが極秘情報の為あまり訪れない方がいいと考えていたセンリは、柱間の四十九日は霊園に来ていた。

赤い木の葉を見立てたモニュメントの前に立つとそれが火影服を纏った柱間の姿と重なった。


『時が経つのは早いね、柱間。あなたが亡くなってもう四十九日か……私もマダラも元気だから安心してね』


空を見上げてセンリが言うと辺りの芝生と木々が微かに風に揺れて、まるでそれが柱間からの返事のような気がした。


『あ、扉間くんも元気だよ。二代目火影になって頑張ってる扉間くんの姿、柱間も見てるよね。やっぱり柱間より冷静で実務も早くてね…相変わらず淡々としてる時もあるけど、イズナともちゃんと接してくれるし里の忍からも頼りにされてるし……とにかくこっちは大丈夫だよ』


先に発った柱間が安心できるようにとセンリは言葉を選んで紡いでいく。ゆるやかに頬を流れる風が心地よくてセンリは目を閉じた。


『……』


しばらく風の音を聞くように耳を澄ませているとふと、背後に気配を感じてセンリは目を開けて振り返った。


『ダンゾウくん、こんにちは』


供え物の花を持ったダンゾウに挨拶をすると、その重たげな瞳が伏せられてお辞儀をされる。


「柱間様、ですか」


センリと同様柱間の四十九日で霊園に訪れたらしいダンゾウの問いかけにセンリは頷いた。『ダンゾウくんもか』と返すと彼も頷き、供養塔の前に屈んで持っていた花を置いた。

ヒルゼンやコハルと共に二十歳を迎えたダンゾウは幼い頃の面影を殆どなくし、常に人を見下したような表情をしていたがこの時ばかりは悼むように目を閉じて手を合わせていた。その様子を見下ろしてセンリは少し微笑んだ。

黙祷が終わるとダンゾウは立ち上がり、センリを見た。イズナと同じくらいの身長だな、とセンリがふと思っていると顎の傷が動いた。


「センリ様はよく霊園を訪れていますね」


唐突な言葉に一瞬センリは瞳を揺らしたが、すぐにダンゾウに向かって薄く笑みを浮かべた。


『うん、時間がある時はね』


センリはそう言ったが、ダンゾウはこれまでに何度もここへ足を運んでいるセンリの姿を見ていた。霊園が出来る前、遺体が無造作に置かれた墓地だった頃も、センリが墓の前で手を合わせ花を捧げているのは何度も目にした光景だった。

センリ程長く生きていれば誰かが死んだ事などただの小さな出来事に変わり、忘れゆくものではないかと思っていたダンゾウはそれが意外でずっと不思議だった。


「センリ様は昔から変わりませんね。忍とは思えない程心が優しい」


その言葉には少しの嫌味がこもっていたがセンリは気付かずにいつもの調子だった。

自分が幼い頃見た姿と相も変わらず穏やかな表情にダンゾウはずっと疑問を抱いていた。センリと面と向かって二人で話せる事は珍しいので、ダンゾウは思い切ってその口を開く。


「センリ様程長く生きていれば忍の死など幾度も目にする光景でしょう。あの戦国時代を生き抜いてきたセンリ様なら、オレ達が経験する何倍も残酷な事を経験してきているはずです。なのに、どうしていつまでもそんな風に明るくいられるのか不思議です」


その言葉を聞くとセンリは不思議そうに何回か瞬きを繰り返した。予期せずポロリと転がり落ちた本音を言ってからダンゾウは何を聞いているのだろうと突然恥ずかしくなりセンリから目を逸らした。

しかしセンリはその顔を覗き込むようにして笑いかけた。
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