- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-二代目火影-


イズナが出て行くとマダラが小さく息を吐いた。


「全く、お前は本当に唐突な事を言い出すな。相談役、とやらも勝手に…」


マダラはセンリの意見で話が纏まった事は安心してはいたがその唐突さに少々呆れていた。


『私とマダラはこれからも歳をとる事はないでしょ?やっぱり火影とかそういうのは時代を生きてる人達がなって、私達はそれを手助けする立場にいた方がいいなって』

「まあ、お前の言いたい事は大体分かっている。それに俺は人々の前に立つ事は好かんから扉間が火影になるのも反対はしないが…」


マダラも里の人々が自分か扉間かで迷っている事は薄々勘づいていた。自分は忍達の前に立ち皆を引っ張っていく事が好きではなかったし、イズナの事があれど扉間に関しては無感情といったところだった為火影については特に異論はない。

しかしイズナの事が気掛かりだった。


「センリ、お前…オレとイズナの仲を取り持とうとしているのか?」


扉間がセンリに問い掛けた。センリは違うと首を振り掛けてふと止まった。


『?』


一体何を言っているのかと一瞬マダラは考えたが、その訳はすぐに分かった。

扉間は自分がイズナを一度殺した事は知らないはずだ。マダラは不審に思い、はくはつの横顔を見た。


「……里が出来た頃、イズナから聞いた。オレがイズナを殺めセンリがもう一度生を与えた事も、そのせいで写輪眼を失った事も」


マダラは突然の事実に驚いて扉間を見たが、どう見ても嘘をついているようには見えなかった。

センリは里ができた直後に扉間から聞いて知っていたが、マダラの方は違っていた。イズナが何も言っていなかった為、今の今まで知らずにいた。


「イズナがお前に話したのか?」


あのイズナが扉間と話すところなど見た事が無かったので俄に信じられなかったマダラだったが、扉間は小さく頷いた。


『そういうつもりで言ったんじゃなかったけど…でも仲を取り持つっていうのは確かに有りかも。イズナは前よりうちは一族に拘る事がなくなったし、扉間くんについても思っているよりは気にしてないとは思う。それでも二人の気持ちを考えると私は結構強引な事してるんだけどね…』


センリは自虐的に笑った。
扉間とイズナとの関係やお互いの気持ちを考えると自分のしている事は二人にとって酷な事だろうと分かってはいた。


『あとイズナを推したのはもう一つ……イズナは学校の先生の仕事が自分に合っていると思ってたと思うんだけど…四年前の戦争の時、子ども達の側にいなきゃいけないから自分が戦いに参加できないってことで悔しい思いをしてた。だから、火影の近くで里に貢献出来ればなって……これは完全に私のわがままなんだけど』


イズナの悔しさは兄であるマダラにも伝わっていた。子どもを守る事も大事だがやはりイズナは写輪眼が無い事に歯痒さも感じていたとは思う。

これは個人的な意見といったらそうなってしまうが、自分は火影の側近をして共に里を守れているような気がしていた。イズナが自分と同じその心を知ってくれたら確かに兄としては嬉しい事だ。

千手の後ろに立つのではなく、同じ方向を同じ位置で。
マダラは柱間とそうして今までやってきたつもりだったし、それが心地よかった。それをイズナが知ってくれたなら喜ばしい事に代わりはない。


しかし隣に立つ相手が扉間ではそれはかなり難しいのではないかとも思った。

少し申し訳なさげに微笑んでいるセンリは二人の仲を取り持とうとしているより、そうなる事をただ祈っているように見えた。


「…オレの…」


扉間が唐突に小さく言うのでセンリをじっと見ていたマダラはそちらに目を向けた。薄赤の瞳は相変わらず何を考えているのか分からなかった。


「オレの兄弟は昔、うちはに殺された」


昔の因縁をほじくり返そうとしているのかと思い顔をしかめたマダラだったが、扉間はそうではなかった。


「しかし…今はもううちはを恨んでも憎んでもいない。あの頃は多くの忍達が殺し、殺された。今となっては過去の事だ。もうあの時のような意味の無い戦いは絶対にしたくはない。その為にオレは全力で里に尽くす」


マダラはここまでハッキリした扉間の主張を初めて聞いた気がした。何を考えているのか分からない冷酷な人間だという印象だったが、どうやら違うのかもしれないとも思った。

センリは意思のこもった強い瞳を見返して微笑んだ。


「それに、イズナの実力なら側近として申し分無い」


扉間も軽く唇の端を持ち上げた。


「(柱間……少し、賭けてみてもいいかもしれんな。お前の弟に)」


センリの賭けはもしかしたらいい方に転がるのかもしれない、という思いが湧き上がってマダラは心の中で友にそっと語り掛けた。
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