木ノ葉隠れ創設編

-火影と側近-


夕日が赤く照らす帰り道、センリとマダラは食料を買ってから帰宅する為並んで歩いていた。二人の影が道に長く伸びている。


『オロシさんも大袈裟だったな…』


つい先ほど寄った八百屋の亭主であるオロシにも綺麗だ綺麗だと言われちょっとした騒動になったため時間をくってしまった。不思議そうに呟くセンリをマダラは呆れたように笑う。


「昔から思ってたがお前怖いくらい鈍感だな。何年も生きてるのにどうしたらそうなるんだ?」


ため息交じりにマダラが言うのでセンリは不可解な面持ちでその顔を見上げる。夕日が横から当たってマダラの顔にも影をつくっていた。


『?』


首を傾げるセンリを見て目を細める。夕日に照らされるセンリは何故か儚げにも見えた。よくよく見つめれば、今のセンリはやはり普段の愛らしい少女のような引っ掛かりのない美しさではなく、その夕日の光さえも飾りに見えるくらいこぼれる艶かしさがあった。

行き場の無い心の鼓動をどう表したらいいか分からずにマダラは曖昧に微笑んだ。


『どうしたの?』


自分をじっと見てくるマダラの目を見返すとマダラの目がすうっと細められた。慈しむようなそんな表情。


「いや………お前は何をしても映えるんだろうなと思ってな」


夕日に照らされ少しだけ口角を上げるマダラの言葉にセンリの胸がどきりと音を立てた。外れにある家に向かう道の地を二人の靴裏がザッザッと蹴る。


『ど、どうしたのいきなり』


顔が熱を持っていくのを感じてセンリはマダラから目をそらした。


「センリは着飾らなくても十分綺麗だとは思ってたが……やはりめかし込むと一層引き立つなと思っただけだ」


いつもセンリをからかうように意地悪を言ったりするマダラがたまにこうしてふと慈しみを込めて言葉を発すると体が火照ったように熱くなってしまう。


『なっ…そんな事、ないよ』


照れてはにかんだように唇をゆがめるのでマダラは物珍しくセンリを見下ろす。夕日が燃えるように赤くて良かったとセンリは思った。きっと今自分の顔は耳まで赤く染まっている事だろう。


「なに照れてる。散々大名やら里の者にも言われた事だし、容姿に関してはいつも言われているだろう」


何を今更恥ずかしがっているとマダラは不思議そうに言うがセンリは照れたままだ。


『それは社交辞令ってやつだし、そうやって真剣に言われると恥ずかしい。マダラってあんまり私の事褒めないし余計…』


自分を見ないで俯くセンリにマダラは、水切り石が向こう岸に届きそうで届かないむず痒いようなやるせないような気持ちになった。


「何言ってんだ。俺は昔からずっと思ってたさ………そうか、伝わっていなかったか」


自分は割とセンリに好意を見せているつもりだったがどうやら全く伝わっていないようだった。これからは鈍いセンリでも理解出来るように言葉を選ばなければと思った。

センリは根っからの馬鹿ではないとは昔から思ってはいたが、やはり聡明に振る舞うと様になる。知性に鋭く頭の回転も早いセンリも悪くない。しかしマダラは今目の前で自分の言葉に初々しく照れているセンリの方がすきだった。


『そういうのはいいとして………無事に火影の話も通って良かったね』


ひとつ咳払いをして、顔の熱を払うようにセンリが話を変える。


「ん?ああ、そうだな」


マダラが答える。ぽつりぽつりと家が無くなり、先にイズナが待つ自宅が見えた。


『柱間を支えてあげてね、マダラ』


さっきまで恥ずかしそうにしていたくせにそうなると気持ちの切り替えが素早いセンリにあえて口を挟まず疑問を頭に留めた。


「俺がいなくてもあいつは弟と二人でもやっていけそうだが」


少し鼻で笑ったような息を吐きマダラが言った。



『弟と友だちは別だよ。柱間はマダラがいないとやっていけないって言ってたじゃない!』



本気でそれを言っているかどうかは分からないだろうと言おうと思ったが、返ってくる言葉は想像できたので喉元で引っ込んだ。


「センリはどうなんだ?俺がいなくてもやっていけるか?」


言葉にならなかった質問を変えて問い掛けてみた。するとセンリはこちらを見上げる。


『マダラはいなくならない。それに、私はマダラの隣にいるって決めたんだから!』


清々しいほど澄んだ瞳。金色の瞳が夕日の光でより輝いて見えた。眩しかった。


「そういうのは恥ずかしくないのか…」


マダラが小さく呟けば微笑みながら再び首を傾げる動作をするセンリ。

ただ買ったものを提げた袋片手に家路についているだけなのに、心がじんわりと熱くなっていくのは少々可笑しくも思えた。

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