木ノ葉隠れ創設編
-命を懸けた火影、残された側近-
「…自分の死と引き換えに相手の命を奪う術でした…。男の手から鎖の様なものが飛び出したかと思うと柱間様の心臓に……男は自分と道連れに柱間様を……!」
そこまで説明してサスケは耐えられなくなったようにまた顔を伏せた。
話を聞いて何故かセンリは納得してしまった。
昔と同じだ。
柱間は未来の為に潔く命を差し出せる人間だった。
その場で戦えば死ぬ事は無かった。
だが戦争を起こさせないという、里を守りたいという思いだけで柱間は自分の命を捨てたのだ。
センリは安らかな表情の柱間を見た。その顔にもう笑みが刻まれる事は無いのだと思うと突然悲しみの感情が溢れ出した。
「柱間は、里を守る為に…」
「父様…」
ミトの涙はもう乾いていたがその瞳は悲愴で伏せられていた。
「……滝隠れの連中はどこに」
マダラが静かに言った。怒りと無念の感情をどうにか抑え込んでいるような息遣いだった。
「狙いは初めから柱間様の抹殺だったのだと思います。攻撃してくることなくその後すぐに自里に向かっていったようでしたから…私達はすぐに柱間様を木ノ葉に…」
サスケの言葉を聞くとマダラはキッと唇を噛んでくるりと後ろを向いた。そのまま部屋を出ようとしたが一歩半踏み出したところでセンリが口を開いた。
『マダラ、ダメだよ』
センリの声に踏み出した足が止まる。
「里長の命を奪ったんだぞ?生かしてはおけない!」
マダラは振り返ってセンリの背中に鋭く言ったが、センリは柱間を見下ろしたまま落ち着いていた。
『ダメだよ。それじゃあ、柱間が自分の命を差し出した意味が無い』
「だが…!」
マダラはセンリの後頭部を見つめて拳をギュっと強く握り締めた。やり場のない怒りをどうしようもできなくて涙が出そうになった。
『それをしたら柱間のした事が無駄になる。どんな気持ちで柱間が相手の要求を呑んだのか…柱間の気持ちが分からないあなたじゃないはずだよ』
センリの落ち着いた態度とは逆にマダラの写輪眼が赤く燃えていた。
センリの後ろ姿の先に柱間の遺体が見えてマダラは瞳を逸らした。噛み締めた唇が痛かった。血が出てるのではないかと思った。
それなのにそれ以上に胸の奥が痛かった。
誰かに思い切り心臓を握り潰されているような、しかしそれをどうにも出来ない歯痒さと怒りと、目の前の現実を直視しなければいけない残酷さとで頭がいっぱいで、どうする事も出来なかった。
「…っ……」
マダラは一度柱間から目を逸らした後再びセンリ達に背を向けて今度こそ部屋から出て行った。
『大丈夫だよ。滝隠れに向かった訳じゃないから』
マダラが仇討ちに向かったのかと思って後を追おうとしていたサスケをセンリは制止した。
センリはマダラが仕返しをしに行かない事は分かっていた。
[ 130/230 ][← ] [ →]
back