木ノ葉隠れ創設編
-命を懸けた火影、残された側近-
出会いがあればいつか別れがあるとはよく耳にする言葉だった。
人と人とが出会えばいつかは死に別れる時が来る。いつかは別れなければならないとは言うが、この忍世界ではその残酷な別れは唐突で、いつも突然だ。
別れてしまってからではもうどうしようもないのに、あの時こうしていれば良かった等と思う事も多くある。人生で一度たりとも後悔しない人間はいないだろう。
しかしそれでもマダラは、この時ほど後悔の念に駆られる事は後にも先にもないのではないかと思った。
サスケが入っていった部屋を見てマダラは全てを理解してしまった。
まず目に入ったのは薄暗い部屋の石壁。光がない。その部屋だけまるで夜だった。
視線をずらすと椅子に座り込むミトの後ろ姿とその肩を抱く浅葱の姿が見えた。その前には扉間が立っていてその瞳がこちらに向けられた。
そこから先に視線を動かしたくなかった。
『そん、な』
最後に目に入ったのは、白い布を体にかけられてピクリとも動かない見慣れた顔。
サスケが耐えられないというふうに顔を逸らした。
『柱間…』
まるで人形のように微動だにしない、柱間の姿があった。
センリの小さく呟いた声が隣で聞こえて、続けてカツ、と一歩足を踏み出す靴の音がした。
「センリ、」
センリの声に気付き振り返ったミトの顔には涙の跡があった。
マダラもセンリも、もう全てを理解していた。
先に柱間に近付いたのはセンリだった。
ゆっくり、ゆっくりと近付き、間近でその顔を見下ろした。口も目も閉じられ、一見すればただ眠っているだけのように見えたが、血色の良かった肌には血の気が無く唇の色も無い。
「…つい数時間前です」
ミトが小さく言ってセンリはその顔を見たが何も言葉が出て来なかった。
そっと胸の上に手を当ててみたが、動く事の無いその体はただ現実を残酷なものにするだけだった。
「…一体、何が」
誰に言うでもなくマダラが呟く。
扉間がサスケの方に目をやると彼は静かに話し始めた。
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