- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-火影と側近-


『大名さまっておもしろい被り物してたね。あれってなんなんだろう?』


緊張感なくのどかに言うセンリはいつもの口調なのに、マダラも扉間もその美しさに中々目が離せなかった。


「お前、まさか本気で大名たちの暇つぶしに付き合うわけじゃないだろうな?」


マダラがまさかという物言いでセンリに問いかける。へ?と言う間抜けな声を出すセンリ。


『ダメなの?』


何の疑いもなく目を丸くして自分を見上げるセンリにマダラはため息をついた。先ほど少しセンリが聡明に見えた事は撤回しようとマダラも扉間も思った。


「ダメだ」


有無を言わせぬマダラの言葉だ。


『えっ、なんで』

「ダメなものはダメだ」

『道に迷ったりしないのに…』

「そういう事じゃなくて……とにかくダメだ」

『じゃあマダラも一緒に行こう!』

「…まあ、それなら…………いやよくない。ダメと言ったらダメだ」


じーっとマダラを見つめるセンリ。正直頷いてしまいそうなほど可愛らしかったがマダラは引き下がらなかった。


「お前には色々やる事があるだろうが。これから俺達を側で手伝うんだろう?大名にかまけてる暇なんてない」


マダラの言葉に単純なセンリは一瞬斜め上に視線をずらした後、確かにとウンウン頷いた。


『ん…確かにそうだよね。里のことでいそがしいよね』


バカで良かった。
マダラはこの時ほどセンリに感謝したことは無かった。


「服はミトに借りたんだろう?ほら、返しに行くぞ」


マダラがサッとセンリに背を向け歩き出す。


『あっ、柱間たちと帰るって言ったんだった!扉間くんも、行こう』


マダラの後を追って歩き出したセンリが扉間をチョイチョイと手招きした。柱間は扉間とも一緒に住んでいるので帰るところは一緒だ。


「あ、ああ」


一呼吸遅れて扉間もセンリを追う。

三人と一緒に再び柱間邸に帰るとミトが迎えてくれた。浅葱にはミトの羽織りがかけられていた。

センリはすぐにミトと部屋に行き着流しを脱ぎ、綺麗に洗ってから返そうとしたがミトが大丈夫と言って聞かないので仕方なくセンリはお礼を言って着流しを返した。やはり下履きがないと股の間がスースーするとミトに言うと、笑われた。仮粧は入浴の時よく洗い流せば大丈夫と教えてもらい、センリは髪飾りもミトに返した。


玄関で待つマダラのところに戻ればまだ柱間も扉間もいた。いつものことだが扉間は戸に寄りかかって二人の会話には入ってはいない。


「センリの綺麗さが引き立ったでしょう」


さも自慢げにミトが言うと柱間が深く頷いた。


「大名たちも見蕩れていたぞ!」


さすがはセンリと何故か柱間も自慢げに笑った。センリは笑って頬をかく。


『ミトが綺麗にやってくれたからね。柱間よ、褒めても何も出んぞ』


イタズラっぽくセンリが言えば柱間もつられて笑った。

「いやいや、冗談ではないぞ!ほら、マダラが妬いている」


柱間はマダラの肩をポンポン叩く。マダラはムスッとしてその手を払った。


「センリを息子の妾にしようなんて、ふざけた事言いやがって……大名じゃなかったら切り倒すところだった」


本当にヤキモチをやく子どものような口調のマダラを見てセンリは目をぱちくりさせながらも面白そうに笑った。ミトは「まあ」と口元を手で覆い少し驚いた様子だったが、柱間は声を上げて笑う。


「そんな事を言われたのか?はっはっは!さすがはセンリだな」


呑気に笑う柱間を横目に睨むマダラ。


「笑い事じゃない!」


むすくれながら文句を言うマダラの表情にも、柱間は気にせずだ。


「しかし、センリのお陰で会談が上手く纏まった」


腕を組んで溜息をつきながらも扉間が感謝して言うとウンウンと柱間も同意した。


「いやあ本当に良かった。とりあえずひと段落ぞ」


豪快に笑う柱間を呆れたように見るマダラ。しかしセンリの登場で大名の意志がいい方に動いたのは確かだったので何も言えなかった。


『まあ、無事に終わって良かった良かった』


こちらも柱間に負けないくらい能天気なセンリ。ミトはそのやり取りをクスクス笑って見ていた。


「ハア………もう日も暮れる。帰るぞセンリ」


玄関から射し込む夕日の光に気付いてマダラが言った。元気よく返事をして敬礼した。


『じゃあまたね。浅葱くんにもよろしく』

「じゃあな」


マダラは短く言って、センリは三人に手を振った。ミトは『バイバーイ』と言いながら去っていくセンリの背中が小さくなるまで手を振っていた。
センリがいなくなると扉間が小さく息を吐いた。


「兄者が女だったらあんな感じになるんだろうな。センリといると兄者を見ているようだ」

「む、そうか?」


喜ぼうと思ったが嫌に扉間が神妙な顔をするので柱間は唸った。


「だからマダラ殿は柱間のことが好きなんですね」


笑みを含みながらミトが言った。しかし妻の言った言葉のその意味は柱間には分からなかった。

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