-揺れる復讐心-
センリが眠り続ける現実の世界。
センリが起きる気配のない眠りについてからもう四年が経とうとしていた。
「…っ………」
マダラは押し寄せる感情を殺していた。
…目の前には、イズナの亡骸があった。もう動くことは無い、弟の姿。この数週間でずいぶんと痩せ細った為に、鎖骨が痛々しい程に浮き上がっていた。
イズナの目には包帯が巻かれ、手が胸の前で組まれている。マダラはその手を握るが、もちろん握り返される事はない。その手の冷たさを感じると、途端に弟の死が現実のものなのだと、実感しだした。心臓が冷えた。
「イズナっ……」
マダラの悲痛な声がしんとした空間に染み渡るが、その声に応える者は誰もいない。
前回の戦場で扉間から受けた傷が治らずに、イズナは息を引き取った。センリの笑顔を見ることも無く。
隣の部屋で眠るセンリの顔を見ながら、その瞳が開く事を最期まで祈りながら、弱ったイズナ死んだのだ。センリの笑顔を心から望みながらイズナは死に、そしてマダラに最後の力を引き渡した。
「…っ……」
あんなにセンリを慕っていたイズナ。最後くらいはセンリの笑っているところを見て逝ってほしかった。それは、イズナにとっても最も後悔する出来事だっただろう。イズナの心を思うと、マダラは、胸の奥に酷い痛みを感じた。
四年弱、センリが目を覚まさないこの世界で、マダラもイズナも戦い続けていた。そしてたった今、その限界がきたのだ。
マダラの瞳には新しい光が宿っていた。
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