- ナノ -

-再びの不死鳥-



『カルマ……私はもう決めたの』


黙って話を聞いていたセンリが口を開く。


『マダラの隣を歩くって決めた。インドラは一人で暗い道を歩いていってしまった………でも、私は絶対にマダラの側にいる。間違った道に行こうとしたら…今度は全力でそれを止めてみせる。今度は……絶対に受け止める』


もうセンリは決めていた。繋いだ手はもう離さない事を。繋いでおけば、その手が空を切る事はもうないのだという事。

マダラが不死になったとしても自分だって死なないままだ。それならそうなったら自分がマダラを止めればいい。力づくだとしても。

カルマはその言葉を聞いて薄く笑みを浮かべた。


「なるほど………御主の気持ちはそれほどまでに強いものとなっていたか」

『うん。それに、マダラはインドラじゃない。私はマダラっていう人が好きなんだ…―――。戦争が終わったら……兄弟喧嘩を終わらせたら、きっとマダラに伝えるよ。ちゃんと、自分の気持ちを』


カルマはセンリに感心するとともにその愛情の深さを知った。人間達に女神などと言われるのも頷ける。


「ならば我はいつまでもそれを見守っていることとしよう」

『ま、まあ……カルマは色々話してくれたけど…そもそもマダラが私をどう思ってるかはちょっと、うーん、心配なところなんだけど……』


そんなことはない、と言いかけてカルマは口を閉じた。いつだってこの笑顔に何かを託したくなる。今までもそうだったように。この世界の行く末をセンリに預けてみたくなるのだ。


「あと、それから…」

決意に溢れたセンリを見ながらカルマがふと思い出す。


「これから我の力はあまり使うなとは言ったが……そうだな、御主の治癒力にも気を配れ」

『治癒力?』


センリはまた頭にハテナを浮かべた。


「御主は自身が受けた傷をすぐに治癒することが出来るであろう?それに特別なにもしなくとも、数日もあれば大方の傷は治る。あれは御主の中の体液……体の中の水分とでも言うか…―――それが体に巡っているからこそだ」

『体の水分が、私の治癒の力なの?』


カルマは大きく頷いた。


「そういう事だ。そしてその治癒の力は御主の中の慕情や愛情が大きくなるにつれて本当の力を発揮する。それを大きく現し、特段力の源になっているのは“涙”だ」

『涙?』

センリは未だになんの事だか分からないというふうに首を傾げた。


「そうだ。御主の中の愛が強くなればなる程我の力も引き出され混じり合い、より強固な力となる。それを大きく表すのが御主の涙だ。

元より、我の涙には人を癒す力がある。“癒す”という力が我らには共通しているのだ。我が御主と共にあれるのも、それが大きく影響しているのだろう。我の力に、御主自身の治癒力が混じり合えば………それは全てを癒す力となり、地に落ちる。しかし最大限の力を発揮するにはもちろんリスクもある」

『私の中の愛が増えればその涙の治癒の力が大きくなるけど、それを使うと眠くなるって事?』


カルマは幾秒か、センリをじっと見つめた。


「まあ……そんなところだ。ただリスクはそれだけではない。まあ今のところは呪いのお陰で、我らの力が抑えられているのがむしろ救いだな……」


センリはウーンと唸っている。


「とにかく………強大な力はいずれ周囲の不浄な欲をも引き寄せる。今の御主は確かに誰よりも強い。しかしその分、満月の夜には注意を払え。本当に信頼した者以外には簡単には心を許さぬ事だ」

『うーん、分かった。がんばるよ!』


センリが本当に理解したのかは定かではなさそうなのでカルマはため息をつく。


「(……今度こそ、あ奴ならば…………)」


気合を入れ直しているセンリを見てカルマは少し思いを巡らせていた。

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