- ナノ -

-再びの不死鳥-



「…御主、あのインドラの転生者に惹かれておったのだな」


何を言われるかと思っていると、センリの考えの斜め上を行く言葉がカルマから聞こえてきたので、つい固まってしまった。


「…いや、別にそれが悪いと言っている訳では無い。御主にもそんな感情があったと驚いているだけだ」


つまりカルマはセンリの事を少しバカにしていた。


『みんなして酷い…!私だって恋愛くらい……――――』


センリはいつかのイズナの言葉を思い出し、大袈裟にショックを受けた。


「貶している訳では無い。むしろ人を愛するのは素晴らしい事だ。しかし……それについては言っておかねばならないことがあってな」


センリはカルマの真剣な様子に気付き再び静聴の体制をとる。


「ふむ……どこから話すか…………我が不死の鳳凰である事は知っているな?元々鳳凰というのは“つがい”だ」

『?』

「……簡単に言えば雄と雌…それが二つ組み合わさって鳳凰となる。鳳は雄、凰は雌といえば分かりやすいか」


センリの不思議そうな顔を見てカルマは違う言葉を選ぶ。


「御主には不死の力がある。それは我が御主と同じ力を共有しているからだ。そして御主と生涯共にいると契りを交わした相手……夫婦となると誓約した相手もそれを受ける事になる」


センリは首を傾げてカルマを見ている。


「つまり……夫となった相手も不死になるということだ」


カルマが静かに言う。
さすがのセンリでもそれは理解することが出来た。


「最初に言っておくべきだったか……驚くのも無理はない。しかしそれも事実。御主がもし、あのインドラの転生者……うちは一族の男と夫婦となれば、お互いに死ぬ事はなくなる」


突然聞いた信じ難い事実にセンリの空いた口が塞がらない。


「永久に二人が死ぬ事はなくなる。しかし、我にもどの程度までかは分からん。御主は心臓を潰されようが死ぬ事は無いが、果たして相手もそうかどうかは……うむ…死ぬ事はなくなる、というより、相手も歳をとらなくなる、という方がいいな。

しかしそれには難点もある。…あの男はインドラの転生者。心のどこかにインドラの思想がある。それは御主も少し感じておったのではないか?」


センリは記憶をたどる。確かにマダラはどこかインドラと似た空気を醸し出している時があるし、力が一番だと考えている時もあった。性格も少し似ているかもしれない。


「インドラは忍宗をこの世界から追い出すまで戦いは止めぬと言っていた。御主と夫婦となり、不死となれば……もしまたインドラのような考えに至ったとしても……それを止めることが出来なくなるという事だ」


カルマはその事を危惧していた。再びインドラの思想が表に出てマダラがそれに染まってしまったとしたら……不死となればそれを止めるすべはない。


「あの男を愛する事はそれなりの覚悟を用する。あの男からインドラの転生者でなくなると言うなら話は別だが……そんな事すれば十中八九あの男は死ぬ」


インドラのチャクラを持つマダラは同じくインドラの魂の一部もそこに眠っている。不死になればいつそれが顔を出してもおかしくない。だからと言ってそのインドラの欠片を無くすことはマダラを殺すことだというのだ。

しかしカルマが思っていたよりもセンリはその事実に心を迷わせることは無かった。

[ 91/125 ]

[← ] [ →]


back