-うちはマダラ-
………頭が重い。
『っ……』
目に入る陽の光が眩しい。
ゆっくりと体を起こす。頭がぼーっとする。体もだるい。頭痛もする。動くのが億劫だ。何年も動かないでいた気分だ。
おでこを拳で押さえる。すると頭の痛みはすこしマシになった。
『ん………』
声も出る。手を動かす。
顔の目の前にかざしてみる。大丈夫、手の指も動く。長く息を吐く。なんだか久しぶりに呼吸をした気分だ。
「お前……誰?」
突然声がした。声のした方に目をやると主は意外と近くにいた。しかしこちらを警戒しているようだ。そこにいたのは小さな少年だ。ツンツンとした黒髪に、その幼い容姿に似つかわしくない鋭い目がこちらを睨むように見ていた。
『わ、たし………』
一瞬頭に鋭い痛みが走る。前頭部を押さえ込む。
「答えぬか!このお方は祖の国の皇テンジ様におわせられるぞ!」
「しかし本当にセンリ様はカグヤ様とは正反対のお方ですね。ご友人と聞いて驚きました」
「国境にカの国の大軍勢が!」
「全軍、カグヤを何としてでも探し出すのだ!草の根を分けてでも探し出せ!…致し方あるまい……」
「この世を照らせ…無限月読!!」
頭の中に走馬灯のように記憶が駆け巡る。
「母上はああしていつも空を見上げているが、一体何を見上げているのだろう」
「…行ったのじゃな、あの峠の向こうに」
「対決の時が来たようだな…」
「な、ぜ……」
「そうするよ。二人共、達者でね」
長くそして短かったあの日々。
そうだ。私は彼らと共に……。
「チャクラを練り力を発動させるためには手を結ぶ型が関係してることに気づいたんだ。型の組み合わせ次第ではいろんな力が使えるようになると思う。手の型を“印”、発動する現象を“術”って名づけてみた」
「だったらずっと側にいてくれる?」
「そういう訳じゃないんだけど……俺は前みたいな兄さんに戻ってほしいだけ。みんなに優しかった兄さんに」
「これより、忍宗の後継者を決める」
「少しだけ……」
「なっ、なぜです。父上!私には兄さんほどの忍宗の才はありません!」
「いや縛れる。誰も勝ることの無い力を示せばそれは可能になる。だから俺は誰よりも強くなる。ぶれることの無い完璧な力を手にする。脆弱な理想は今日で終わりだ」
「センリ、わしは幸せだった。お前はわしの大切な母だ。感謝してもしきれぬ。母に看取られながら逝けるとは、なんと幸せなことか」
そうだ…。
私はセンリ。
大筒木センリ。
大筒木カグヤの友であり、ハゴロモとハムラの育ての母であり、インドラとアシュラの母でもあり姉であり……。そして、不死になった人間。
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