-恋慕-
センリには少し気がかりな事があった。
それから三月に入ってすぐ、センリの様子に変化があって、始終眠くて眠くて仕方なくなったのだ。
夜、睡眠不足というわけでもない。
きちんと睡眠を取っているにも関わらず、日中眠気が収まらないようになったのだ。
台所に立っていても、修業中だとしても、常にセンリはクラッと一瞬意識を失ってしまうのだった。
マダラとイズナはすぐセンリのおかしさに気づいた。しかし眠いという症状以外これと言ったものがない。
センリも心当たりがなく、首を傾げるばかりだった。
マダラはセンリが戦に出るのを禁じた。
もし戦場で意識が飛んだなどと言ったらそれこそ命取り。センリは死なないと分かっていてもやはりそれは受け入れられなかった。
センリは何年か前そうしていたように、戦が終わるのを集落で待ち、帰ってきた負傷者の手当をするという状態に戻った。
『(一体どうなってるの………常にチャクラを全身に流してないと意識がすぐにでも飛びそう………なんか…気を失ってしまったらなんかいけない気がする………でも、眠い…)』
そんな生活が一ヶ月ほど続いた。
戦場に出ない事で柱間が心配するだろうかとも思ったが仕方なかった。
センリは何をするにも今までより余裕がなくなってしまった。マダラとイズナが無事に帰ってきたかの確認、炊事するくらいが限界だった。
−−そしてその日は唐突に訪れる。
「センリ、行ってくる」
その日は朝から千手との戦の日だった。
センリは戦に向かう一族たちを集落の入り口で見送る。マダラが刀を鞘に入れ、団扇を掲げてセンリを振り返る。
『いってらっしゃい』
いつも通りのセンリの笑顔だった。それを見てマダラも少しだけ笑う。
「よし…行くぞ」
他の者達に声をかけ、一族たちは旅立っていった。センリは少し切なそうにその一団を手を振りながら見送る。
『(んん………眠い…)』
背を向けて走って行く一同が歪んで見える。センリは拳を額に当てる。
『(マダラ……今日もどうか無事で)』
その日、マダラが起きているセンリを見たのはそれが最後だった。
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