-恋慕-



マダラがセンリを家に連れて帰る頃にはセンリの様子はどんどん酷くなっていた。
今日はまだ満月ではないが、燃焼日の症状だ。

マダラはセンリを布団に寝かせる。


『マダラ……みんな…は…?』


センリはマダラに寝かされると荒い呼吸を繰り返しながらたどたどしく問い掛ける。


「大丈夫だ。イズナを残してきた。今頃イズナが皆を連れて戻っているだろう」


マダラはセンリを安心させるようにそう言うとセンリは微かに微笑む。見るからに辛そうなのにこんな時にも笑顔を忘れないセンリを見てマダラは心が痛んだ。

「もう休め、センリ」

『でも……たたかったあとだし、汚い…よ』


センリは風呂に入りたがったが、そんな事をできる様子ではない。


「具合が良くなったら体を洗えばいい。とにかく今は休んでろ」


マダラは動こうとするセンリを押さえつける。
さすがに気持ち悪いだろうと思い、顔や首元などを濡れた手拭いで拭いてやった。


『マダラ、ありがと………わたし、ちょっと眠い』

まだ少し顔が赤いが、センリはちょっと落ち着いたようで、確かに眠そうだった。


「分かった。皆の事は心配するな。大丈夫だから、安心して寝ろ」


マダラがセンリのお腹をトントンと叩く。幼い頃センリがそうしてくれたように。
センリは力無くニッコリして目を瞑る。マダラが見ているうちにセンリはスースーと寝息をたて始めた。


それからすぐイズナも帰ってきてセンリを心配していたが、スヤスヤと眠るセンリを見て胸をなでおろした。

夜、兄弟二人は部屋の前で話していた。


「兄さん、これから満月の日の前後はセンリ姉さんは戦に出さない方がいい」

イズナは静かにマダラに言う。
マダラも今日のセンリを見て同じことを思っていた。

「ああ、そうだな……どんな封印術かが分かればなんとか出来るかもしれねーのに…」


マダラは悔しそうに呟く。センリの胸元の呪印を見てもどんな術なのか全く分からなかった。かなり精度の高い、そして強い力で縛られているということしか分からない。

とにかく、その日を境に二人はセンリを戦に出すことを制限した。

今回のことで、センリはあまりにも力を使いすぎると疲弊し、満月の日に限らず術で縛られてしまうということが分かった。

センリも訳が知りたいが、未だカルマを呼び出すことに成功していない。
実のところセンリはこれほどまでに強力な術だとは思っていなかった。


再びこの時代に堕ちてからだんだんと酷くなっているような気もしたが、満月の日の症状はその時それぞれだった。熱が出る時がほとんどだが軽い頭痛だけの時もあれば、本当に何も無い時もある。

しかし、満月の日が過ぎればセンリはすぐに元通りになる。その時も二日後にはケロッとして、いつものように笑顔を浮かべていた。

それが皆を安心させるためにそうしているのか、無意識なのか、マダラには分からなかった。

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