-恋慕-



新年を迎えたというのに争いがとどまることは無い。

一月半ばのある日。

うちは一族と千手一族は朝から戦に出ていた。


久しぶりの戦ということもあり、その日は何年と戦った日々の中でお互い一番長く戦い続けていた。

戦場が落ち着いたのはその日、日が傾き始めて来た頃だった。七時間弱は戦っていた。

うちは一族も千手一族の者達も最後には皆、憔悴しきっていた。それを見かねて互いの長であるマダラと柱間は戦いを退く。マダラと柱間もかなり体力を消耗していた。

その時にまだ地に足をしっかりと付けているのはセンリただ一人だった。


『しっかりして!すぐに治すから!』

センリは一足先に一人のくの一を背に乗せて、うちは一族の集落を目指していた。女性はぐったりしていて、かなり重症だ。背中からおびただしいほどの血が流れ出ている。移動している最中にも女性にチャクラを流し続ける。

センリは一族の領地に着くとすぐに女性を背中から下ろし、その傷に手をかざす。


『大丈夫!すぐ治すよ!』


すると大きな傷痕が徐々に消えていく。それと同時に女性の呼吸がゆっくりと戻る。
数十秒で跡形もなく傷は無くなり、女性が目を開ける。

「センリさま………ありがとう…」

女性が声を振り絞ってセンリを見上げる。何度こうしてありがとうと言われただろうか。


『よく頑張ったね。もう話さなくていいから休んでて』

センリは微笑んで、女性を柔らかい地面に寝かせ、再び戦場に戻る。


ここまではこの五年間、戦の度にセンリが行ってきたことだ。しかしその日は今まで通りとは行かなかった。

戦場に戻るとすでに生き残った千手一族は姿を消した後だった。うちは一族の負傷者を回復させていくのだが、今日は長く続いた戦いのせいで過去一番負傷者が多かった。


『(っ………チャクラ使いすぎたかな…?いつもこんなんじゃないのに………明日満月だからかな…?)』


次々と負傷者の怪我を治しているとセンリはだんだんと気力がなくなってくるのを感じた。センリのチャクラはなくなる事はなく次々と湧き出てくる。だが、そんな事していたら体はそれに追いつかなくなる。元々満月の前後は普段よりチャクラを使いづらくなっていた。

それもあってか、今日はいつになく疲れ、つい力が入らなくなる。


『…よし、もうこれで大丈夫だよ』

「助かったよ、センリさん…」


センリが一族の若い青年の腕の怪我を治し、そして立ち上がった時だった。


『っ…!?』


突然ふっと視界が揺れ、脚に力が入らなくなる。夕焼けが傾いたかと思うとセンリはそのまま地面にドサ、と倒れてしまう。

「センリ……!」


少し遠くで皆に帰る指示を出していたマダラはセンリが倒れたことに気付き駆け寄る。
センリの肩を持ち起こす。


「センリ!どうした?」

マダラは息せき切ってセンリを覗き込む。センリはマダラを見上げる。


『大丈夫………』

センリはそう言うが冷や汗が額に浮かび、どう見ても“大丈夫”には見えない。


「そんなわけないだろ!集落に帰るぞ……背中に乗れ」


マダラは力の入らないセンリをどうにか背中に乗せる。
そして全速力で一族の集落へと、自分たちの家へと向かう。

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