-恋慕-
センリが戻ってから戦は未だに平行線を辿っていたが、確実に被害は少なくなっていた。
そして月に一度くる満月の日。カルマの燃焼日だ。何回かその日を経験したがセンリはその日は毎回熱を出した。
それがカルマのいう症状なのかはわからなかったが、動けなくなるほどの熱ではなかった。
マダラは燃焼日の事を知っていたが、それでも普段元気なセンリが少し弱るのは心配だった。
『大丈夫だよマダラ。そんなに酷くないから動けるよ』
センリがその日外へ出ようとするとマダラはそれを阻止した。
「ダメだ。三十八度ある。部屋で横になってろ。家のことなら俺とイズナがやる」
マダラは大丈夫だと言うセンリを部屋に連れていき、布団に寝かせた。
「粥でもつくってやるから少し待ってろ………動くなよ」
マダラはセンリに釘を刺して台所へと向かっていった。
マダラは意外と面倒見がいいというか世話好きだ。その日は必ずセンリを寝かせ、なにかと身の回りの世話をしてくれた。
『マダラ、イズナは?』
外が暗くなり始めてるのを見てセンリは戻ってきたマダラに聞く。
「イズナは一族の修業を見てる。ほら、口を開けろ」
マダラは作った粥をセンリに食べさせる。梅の酸味が程よくセンリの口の中で溶けた。
『忙しいのに毎回ありがとう、マダラ』
センリはマダラが長としてなにかと忙しいことは分かっていた。しかしいつもこうして自分のために時間を割いてくれるマダラがいることはセンリにとってとても幸せなことだった。
「俺の事はいい。センリはたまには自分の心配をしろ。俺たちはいつもお前に頼りっぱなしだった。俺達はもう子供じゃねェんだ。こういう時くらい甘えてろ」
マダラのぶっきらぼうな優しさがセンリには嬉しかった。
今まで自分の後ろを歩いていた小さな兄弟が、いまではこんなにも頼れる、大きく見える。センリはなにか不思議な気分になった。
マダラがセンリに粥を食べさせていると突然部屋の外から急いでバタバタ走る音が聞こえた。と思うと部屋の障子が開けられる。
「センリ姉さんっ、大丈夫?」
イズナはセンリが心配ではやく修業を切り上げてはしってきたのだ。
やはり兄弟。考えることも大体一緒だ。
『大丈夫だよ』
息を少し切らし心配そうに自分を見るイズナを見てセンリは心があたたかくなった。
戦乱の世だが、戦場から離れ家に帰ればいつもそこはあたたかい場所だった。
戦の時に見せるマダラとイズナの恐ろしい表情もそこにはない。冷徹さも非情さもない。そこにあるのはセンリに対する二人の優しさだけだった。
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