-ふたりの再会-
二人の間を流れる川。幾秒かの間、その水音だけが二人を包んでいた。
マダラがその足を一歩、踏み出す。
ジリ、と石と石が触れ合う音が鳴る。
「センリ……なのか…?」
今度は先程よりハッキリと、自分の目に間違いがないことを確かめるように。
その存在を確かめるように、マダラの足は進み、そして川の水の上へと踏み出す。
『マダラ………』
同じようにセンリは一歩一歩足を踏み出し、そして駆け出す。水音が足元から聞こえる。
センリは走り出したかと思うと頭一つ分ほどもあるマダラのその首へと手を伸ばす。マダラは仰け反ることもなくその体を受け止める。
ギュッ、と力を込めて抱きしめると人肌の温かさが身に染みて感じた。
『マダラ……!』
悲しみの涙ではない。しかしどう表したらいいのか分からない。そんな涙がセンリの瞳から溢れる。
『マダラ………』
センリはその名前を呼ぶ。そうすると抱き締める腕の中の温もりが現実味を帯びて、それと同時になぜか胸が苦しくなり涙が止まらなかった。
マダラは、今ここで自分を抱き寄せるその腕がセンリだと……何年も夢に見た人のそれだという事が信じられなかった。
しかし耳元で響くその声は今までずっと頭の中に響いていた声に間違いはなかった。
そして確かに感じる人の温もり。
小さな頃にいつも自分を抱き締めていたその温もり。
マダラは震える自身の手を、自分を抱きしめるその体へと伸ばす。
センリの背中に手を当てる。
存在を確かめるように、そして消えてしまわないように、そっと。
……消えない。
マダラはその手に力を込めて、センリの体へと回し抱きしめる。
「センリ…!」
触れると温かい、決して消えることのない確かな温もりがそこにあった。
マダラの中に感情が一気に押し寄せる。
鼻の奥がツンと痛んだ。目頭が熱くなる。それはこの夜風のせいではない事は分かっていた。なぜならこの体はこんなにもあたたかい。
センリの匂い、温かさ、存在のその全てが今その手の中にあった。
何度も何度も望んだその存在が今、消えること無くマダラの腕の中にあった。
二人はお互い強く、そして今までの空白の時間を埋めるようにただただ抱きしめ合った。
[ 63/125 ][← ] [ →]
back