-扉間の疑心-
『だからね、柱間。この戦争を終わらせるために、ちょっとあなたに聞いて欲しいことがある』
「何ぞ?」
センリは少し考えていたことがあった。柱間は笑いをなんとか止めて、センリに向き直る。
『私はこれからうちは一族に帰ろうと思う』
扉間が鋭く反応して口を開くがセンリはそれを制する。
『大丈夫、絶対に千手一族のことは、なにも言わないから。それに私には写輪眼は効かないから、大丈夫』
扉間は仕方なしに押し黙る。
『私は一族に帰ったら、戦に出させてもらうことにする』
センリらしくない考えに柱間が眉を顰める。
「千手と戦うということか?」
これまた脅すような声で扉間がセンリに問う。
『うーん。どちらかというと戦うふり、かな』
柱間も扉間も理解出来なかったようだ。
『私が使う刀はね、カルマの力を込めて作ってあるの。それで、さらに刀に私の力を上乗せして使うと、斬ったものは二十四時間すると元に戻るの。もし人を斬ったとしても、その傷は二十四時間後に絶対治る。もしその時に死んだとしても一日すれば再生する…つまり生き返る』
柱間と扉間は驚嘆し俄に信じられないようだった。
『この効果が得られるのは、その日初めてこの刀を使ってから十二時間の間だけ。でも十二時間も戦い続けてる事は稀でしょう?だから、私が戦場に出て千手一族と戦う。そうすればかなり犠牲者が減る。あまり長く続けてるとうちはの人たちにバレるかもしれないけど…』
センリはすぐに戦が止められないことをわかっていた。ならば自分が自ら戦場に出ることによって少なくとも犠牲者を減らしたかった。
『うちは一族の人たちは私が治療する。マダラもうちはの人も頑張って説得する。何年かかるかは分からないけど……きっと終わる時が来ると思う。うちは一族と千手一族は一番強い一族なんでしょ?もしその一族が休戦したら……手を組んだら、絶対戦は終わると思うの』
センリの考えはまさに柱間が考えていたことそのものだった。
「センリ……」
柱間は実のところ感動していた。諦めかけていた夢。理解してくれる者はいないと思っていた。だが、センリは諦めてなどいなかった。
「…そんなに簡単に行くとは思えないが」
扉間が言う。確かに今までのうちはと千手を見ればそう簡単に行かない事は一目瞭然だ。
『簡単にはいかないと思う。私は戦場に行ったことがないから……きっとすごく辛い場所なんだと思う』
柱間は死んでいった弟たちを思い出し、センリはハゴロモとの旅を思い出した。センリの脳裏には、自分達の思いを受け止めてくれた人々の笑顔が過ぎっていた。
『でも、終わらないのはもっと辛い。偽善だって何だっていい。誰もが笑い合える世界になるには…本当の意味での平和な世界になるのには、簡単な道なんてない。でも、諦めなければ、それに気付いてくれる人達も、必ずいる』
センリは微笑む。その笑顔に偽りも嘘もない。曇のない心だ。
「…分かった。センリ。一族の者にはオレから言っておく。オレも忍。目的のために、耐え忍ぶとしようぞ」
柱間が力強くそう言った。扉間はもう文句は言わなかった。センリの腑がすぐに見えたからだ。
なぜかセンリの言葉を信じたくなった。兄がセンリを慕う理由が、少しわかった気がした。
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