-扉間の疑心-
『!』
「扉間…!」
次の瞬間、センリの首元には冷たい感覚が走っていた。扉間が瞬時にセンリに近付き、後ろからその首元にクナイを突きつけていた。もちろんセンリは気付いていたが、避ける事はしなかった。
「…こいつは元々あのうちはにいた人間だぞ。消えた、などと言っても実は身を潜めていただけかもしれない。それが突然現れるなど、千手に攻撃を仕掛けに来たとしか思えない。兄者、騙されるな」
「扉間、センリはそんな事しない!」
柱間は止めるが扉間の目は本気だ。殺気がチクチクとセンリに刺さる。しかしセンリは全く動じなかった。
『…扉間くんの言うことは分かる……でもとにかくこれを直さないと。殺すならその後にして』
センリはクナイを気にすることなく瓦礫の山へと向かう。扉間はまるで殺される事を怖がらないセンリを動かずにじっと見ていた。
「…怪しい動きをすれば殺す」
扉間の殺気はまだ収まらないようだった。
『ありがとう扉間くん。何もしないから大丈夫。よし、ちょっと待っててね』
センリが微笑んだので扉間は怪訝そうに眉を顰める。そしてセンリはその瓦礫に手をかざす。
するとその瓦礫が、ふわふわと浮き上がりまるで逆再生をしたかのように天井の穴に戻り塞いでいく。
「…これはすごいな」
柱間が感動して完全に元に戻った天井を見上げる。穴が開き、原型をあまり留めていなかったが、今はもう何も無かったかのように元通りだ。
『よし、戻ったから弁償は勘弁してね』
センリがはにかむ。
「一体どうやったんだ?」
柱間が興味津々に聞くので扉間が「兄者!」とそれを制する。
『元に戻すのは得意なんだよ!』
センリがにっこりする。扉間はセンリが一体何をしに来たのか、目的は何なのかその動きをじっと見るが、センリの笑顔には裏がなかった。
『…で、話は戻るけど……ごめん扉間くん。とりあえず私を殺すかどうかは、話し終わってからでいい?』
「………勝手にしろ」
センリが真剣な眼差しでそう言うので扉間は頷くしかなかった。
「相変わらずだな、センリ!扉間を黙らせるとは!」
柱間が楽しそうに笑うとそれを扉間が睨みつける。
センリが落ちたところはどうやら柱間の家で、居間のようだった。センリが落ちた事により他の人々が駆け付けてこないか耳を澄ませたが、その様子は無い。
『んん…楽しいのが何より。……それで、あなたは柱間だとすると、私が消えてから何年か経ってるってことだよね?』
やっと場が収まり、センリが柱間に尋ねる。
「やはり……マダラが「センリは消えた」と言っていたのは本当だったのか……」
柱間が神妙に呟く。センリはその言葉に反応する。
『消えたって……』
「オレの記憶が正しければ、最後にセンリを見たのは…そうだな…五年くらい前ぞ」
柱間の言葉にセンリが目を見張る。時間を飛んだ事は分かったが、まさか五年もの時間が経っているとは思わなかった。
『五年……私が柱間たちを見た一番新しい記憶は、川で……タジマくんと柱間のお父さん達が対峙してるところなんだけど、合ってる?』
記憶といってもセンリにとってはつい何時間か前だ。
「それだ。その時十尾が現れて…センリと一緒に消えていったんだ」
センリにとってはすぐだったが、柱間の時間はそうではなかったようだ。
『(これが、カルマの言ってた……力が不安定な状態ってこと?)』
「…お前、一体何者なんだ?」
今まで黙っていた扉間が鋭くセンリに問いかける。扉間にとったら不可思議なことこの上ない。柱間も同調してセンリに問いかける。
「センリ、お前はマダラの姉の様な存在だと言っていたな……だがセンリが消えてからのこの数年、マダラのお前に対する感情は姉弟のそれではないような気がした。センリ、お前はうちは一族の人間ではないな?本当はお前は、何者なんだ?」
柱間もずっと不思議に思っていた。
柱間からするとセンリは、マダラの家族のような存在で、とても強いということしか分からない。ずっと知りたいと思っていたのだ。
柱間にも扉間にも追及され、センリはその口を開いた。
『…そっか。じゃあマダラは生きてるんだね。それがわかれば一安心……でも、そうだよね。ちょっと長くなるけど聞いてくれる?』
センリは柱間の目を見る。その奥に一瞬、アシュラの目を感じた気がした。センリはそれを見て、これまでの自分の事を話すことを決めた。
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