-扉間の疑心-
ガッ……!!!
追突する直前にスピードを落としてチャクラを纏ったセンリだったが、木造の家の屋根を突き破り、瓦礫とともにドスンと音を立てて背中から落ちた。砂埃が舞い、センリは煙を手で払った。
『うう………いたた…よかった、生きてた…』
チャクラを纏わずに生身の体だったら確実に死んでいた。この時ほどこの力に感謝した時は無かっただろう。
センリは瓦礫まみれになりながら背中をさすり、起き上がる。埃を吸い、ゴホゴホと咳をしながら目を凝らした。
「…敵襲か!何奴!?」
突然その埃の中から声がした。男の声だ。センリがびっくりしてその声の主を探すが、どちらかというとその男の方が驚いただろう。
『ちょ、ちょっと待って!敵襲じゃない!落ちただけなの!』
センリは砂埃を払いながらその声の主に必死に説明する。
「…んん!?お前は……―――――?」
先程の声と違う方からまた声がする。辺りは夕暮れで少し薄暗いが、センリの眼はすぐに慣れる。
瓦礫の先に二人の男の姿が見えた。
そしてセンリが見上げた先にいたのは――――――。
『えっ…!も、もしかして、』
センリはその顔に見覚えがあった。あった、というより…。
「センリか!?」
『柱間っ?』
二人の声が重なる。
センリの前にいたのは、つい数時間くらい前に見ていた柱間。と思われる人物だ。
「お前…!?本当にセンリか?」
しかしその声はセンリが知っているものより低く、そしてあのオカッパの髪ではなく、肩まで伸びたストレートの長髪。その顔は確かに柱間だったが、垢抜け、どう見ても成長していた。
『ええっ、いや私はセンリだけど…柱間?だよね?』
センリはまじまじと柱間を見て、自信がなくなった。完全にあの時の、センリの記憶にある柱間の姿ではない。
「一体どうなってる?」
『ごめん、私もそれが聞きたい』
柱間もセンリも困惑していた。すると今まで黙っていたもう一人の男が進み出る。
「お前、十尾の」
白く短い髪。鋭い目つきのその青年にもセンリは見覚えがあった。
『あなたは、柱間の弟!えっ、と…』
「…扉間だ」
センリはビシッと扉間を指差す。
『そう!扉間くん!…だよね?……ちょ、ちょっと待って、考えさせて』
センリはそう言ってとりあえず二人を制して、顎に手を当て頭を作動させる。
『(私が最後に見たのはあの時のマダラ…と柱間たち……そして次目覚めたらカルマの異空間だった………それで…また目が覚めたと思ったら落ちてて…それでそれで落ちた先には未来の姿みたいな柱間………!…時を飛ぶかもって…こういう事!?また時代を飛んできたっていうの?)』
センリは効果音がつきそうな勢いでバッと二人を見る。
『また時間を…―――――』
そして一言。唖然とする二人を見てセンリは、安心させようと何度か頷いた。
『柱間、大丈夫。私は攻撃する気もないし、襲おうと思ってここに落ちたわけじゃない。なんていうか、その…時間を飛んできた、みたい』
「そんな事ができるのか?」
信じられないというふうに柱間が言う。
『話すと長くなるんだけど……。ちょっと待って、その前にこれを直すね』
センリが穴の空いた天井を見上げて、立ち上がる。
[ 54/125 ][← ] [ →]
back