-僅かな記憶-
「姉さん、明日早朝神社の掃除があるらしい んだけど……忘れてない?」
「…やっぱり。絶対忘れてると思ってた。ちゃんと朝起きろよな」
「嫌だよ、一緒に寝るなんて。ほんといつまでも子供扱いすんなよ」
「………そんな顔しても無駄だから」
「…………」
「…………布団と布団の間二十センチは空けろよな」
「おやすみ」
「……」
「馬鹿、突然なんだよ」
「俺だって……感謝、してるよ。…………いつもありがと」
「……んで………………」
「なんで…」
「なんでだよ」
「…姉さん、なんで嘘ついてたんだよ」
「父さんと母さんは■■■■だったんだろ」
「姉さん、父さんと母さんは俺を産んでから、病気で死んだって言ったよな?」
「全部嘘だったのかよ」
「なんで…」
「どうして?」
「姉さんの嘘つき」
「なんで父さんと母さんは殺されたんだよ!」
−−ああ、 長い夢。
いつになったら覚めるのかな。
そっか。
私には弟がいたんだ。
ずっと母親代わりとして小さい頃から育ててきた。
父と母は弟が産まれた後すぐ、殺された。
■■■■だったから。
なんで忘れてたんだろう。
少し、思い出した。
弟の名前は?
名前…………。
あれ?
名前。
わたしの
名前は………
私は…………
だれ?
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