- ナノ -

-呪いの謎と、兄弟喧嘩-



「我はこれから御主の中に入る」

『前みたいな感じだね』


しかしカルマの表情は明るくない。センリは不思議そうにカルマを見る。


「いや、そうしたいのだが…そうもいかんのだ。今、御主と我には呪いがかかった状態だ。それが一つになるとすると、どんな事が起きるか我にも予想がつかない。しかし一度こうして我らが出会ってしまった以上はそうする他ない…」


カルマは渋い顔をしている。


「だが幾つか起こりそうな事を御主に教えておく」


センリが深く頷く。

「我はセンリに封印される。そうだな……かつてのハゴロモのような…人柱力と大まかなカラクリは同じと考えて良いと思う。それに比べるとかなり強度な封印だがな………よって外に呼び出すのはかなり困難になる確率が高い。御主の心と会話するのも難しくなるやもしれん。

そのことを踏まえて説明する。よく聞け。
まずは、不死についてだがこれは十中八九これまでと変わらないと考えていい。理由は簡単。我が抜けた後も御主は不死のままだからだ。不死の力は御主にくっついている状態だと思われる。

次に…我には燃焼日というものがある。これは我が生まれ変わる日だと思えば分かり易いな。一度失くなり、そしてまた新しく生まれ変わる。それが満月の日。こちらにも月が出来たから分かるようになったな。

この燃焼日が少しやっかいでな。我はその日は一日力がほとんど使えなくなる。それがもしセンリとシンクロしているとすれば、センリもその日…満月を迎える夜の日、一日中力を使えなくなってしまうかもしれんという事だ。

もちろん心臓を刺されようが死にはせん。が、しかしまたいつ目覚めるかわからぬ、という状態にもなりうる。
もしそうなればその日は命取りだ。御主のことはこの時代でもとうに知れ渡ってしまっているようだからな……力を狙う連中はどこにでもいる。

そしてこの日に他に何が起こるかは少々分かりづらいところだ……何か症状のようなものが出るかもしれんし、そうでないかもしれん。

とにかくこの満月の日だけは気をつけよ」


『分かった。満月の日はチャクラが全く使えなくなるってことだね?』


センリの言葉にカルマが頷く。センリは忘れないようしっかりとその頭に刻む。


「それからこれは憶測に過ぎんが……我が御主に封印されると不安定なうちはまた時間を飛んでしまうかもしれん。それが数時間で済めば良いが何年も飛んでしまうことになりうるかもしれぬのだ。元々我の力は御主ぐらいにしか操作できんくらい膨大だ。我が御主に封印されるということは、前の時とは違い、我に起きる事も御主も経験するということだ。御主のことだからすぐに定まるとは思うが……」


センリは頭をフル回転してその言葉を叩き込む。


「それから治癒の能力も使い過ぎると後々影響が出る。他者を治癒する力、それから御主自身の回復力…これはどちらも元々は御主の力だ。だがそこに我の力も混ざり合うとなれば、この力も使い過ぎるのは不味い。我はこのように人間に封印された事がないのでな……その上呪印の呪いが我らの繋がりを妨害しているとなると……――――とにかく、我々の繋がりが不安定なうちは力を使いすぎるな」


カルマは心配事のようだったが、センリには無用なようだった。


『分かった。じゃあ今までよりもっと強くなればいいんだね?』

センリの心は前向きだった。


「フッ……まあ、そういうことだ。しかし無理は禁物。御主が我の封印をどうにか弱め、そして自らの力を全て引き出せるようになれば、死者ですら蘇らせることも出来る。

その為に御主自身と我の力は全力では使うな。我の力は使わなければその分体に貯まり、後に目一杯活用する事が出来る。カグヤと戦った時のように、全力を使う事は薦めん。それでなくとも御主の力はこの時代では飛び抜けている。この先何があるかは分からぬ。その為になるべく力は溜めておけ」


自分の力をあまり使わず溜めていればいずれ死者蘇生も出来るということだ。


『分かった』

「それに使い過ぎると燃焼日にも影響する。強くなればなるほど、それを奪取しようとする連中も増えるだろうしな。とにかく陰陽遁の力はあまり使うな」


カルマが微笑む。

しかしセンリはその白銀の髪が薄く、透明になっていることに気付く。


『カルマ?体が…』

カルマは人間化した自分の手を見る。その手は爪の先からだんだんと透けていく。


「……なるほど。時間切れというわけか」

カルマはゆっくりと立ち上がる。センリも心配そうに続く。


『カルマ』

「我は御主と共にある。言葉を、心を交わせなくてもいつも一緒だ。この戦争を、尾獣たちを、人々を、この世界を……そして、あのインドラの転生者の心も、御主ならきっと救う事ができる。我はそう信じている。御主は皆を照らす光よ。御主の思う通りにすればいい。思ったままに、生きろ……―――――」


センリは自分の姿も消えていくのを見た。


『(……生きる。たとえそれに終わりがなかったとしても)』


そこはただの白い空間だけになった。

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