-呪いの謎と、兄弟喧嘩-
「我はその様子をずっと見て来た。光となった我は、他者の魂の形を見ることが出来たが、解決する事ができなかった……いつかその戦いに終わりは来る。そう思ってここまで見守って来た………千年。御主が消えてから、約千年が経とうともその戦いに決着はつかなかった」
『そっか…ここは私が消えてから千年後の時代ってこと?だからハゴロモの事が伝説になっちゃってたんだ…』
カルマは頷く。
「我は千年間、御主を探し続けた。光となって時空を飛び…時の狭間を探し続けた。この地上にまた戻ってくるかもしれない……そう思って何度かこの世界にも降り立ち、この世界を観察すると共にセンリを探し続けた。そして………今やっと御主を見つけた」
カルマはカグヤの呪いに抗いながら、センリの事を探し続けていたのだ。
「そしてやはりこれは運命(さだめ)と言える巡り合わせ……切っても切れぬ因縁。御主の宿命なのかもしれんな…息子達は自分を育てた母…家族を無意識に呼んだのかもしれん」
『まさか…』
センリがハッとしてカルマを見る。
「そう……インドラが残した一族はうちはとなり、アシュラが残した一族は千手となった。そしてここからは完全に我の推測ではあるが…今、インドラのチャクラの魂はうちはマダラに、アシュラのチャクラの魂は千手柱間にあると思って良いだろう」
センリは感情を押し殺す。拳の中の爪が当たって痛い。しかしその痛みさえ忘れる程センリは不穏な感覚に陥っていた。
『そう、だったの』
薄々は気付いていた。マダラの中にほんのわずか、インドラの欠片を感じていたこと。マダラと柱間と三人で過ごしている時、無意識にインドラとアシュラの事を考えていたこと。うちは一族が何故、写輪眼を開眼することが出来るのか―――。
「その様子だと少なからず感じていたようだな…。しかし、うちはマダラと千手柱間はもちろんその自覚はないであろう。インドラとアシュラという存在ももちろん知らぬ……これはハゴロモさえ予期していなかった出来事かもしれんな。こうも兄弟喧嘩が続くとは」
センリは今までの事を思い出していた。
それならば二人の戦いの発端の一部は自分にもある。あの時インドラを無理矢理にでも止めていたら……いやもっと前から……――。
「…御主が今何を考えているのかは大方分かる。だったらその答えもすぐに出るはずだ」
センリは真っ直ぐにカルマの目を見る。
『だったら……その兄弟喧嘩は絶対に止めなくちゃ。それは母で、姉で、家族でもある私の役目。絶対終わりにさせる。あの子たちの未来を、暗いものにはさせない。絶対に』
センリは純粋で、真っ直ぐで、そして頑なだった。
カルマはその目には偽りはないと、ずっと信じていた。何年かかろうとセンリはそれを実現する。それが分かっていた。
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