-マダラと柱間、うちはと千手-



マダラ側の岸からタジマとイズナが、そして柱間側からは彼の父と弟と見られる人物が。同時に川の上に降り立つ。

逃げ出そうとしていたマダラと柱間が急いで振り返る。

タジマはすでに刀の柄に手をかけ、タジマの横には刀を抜いたイズナがいる。

うちはも千手も、同じことを息子たちに言っていたのだ。


「考える事は同じようですね、千手仏間」

タジマが半笑いで言う。仏間と言われた男は見たところタジマと同じ位の歳に見えた。


「それと…扉間だったか」

そう言うのはイズナだ。イズナは戦闘態勢だ。


「のようだな、うちはタジマ」

仏間も威嚇するように言う。仏間はいかつい表情で目の前のタジマを睨み付けた。一重の、柱間と良く似た目だった。


「それにイズナだな」

扉間は柱間の弟のようだった。柱間と父とは違い、髪の色は白い。白い肌はどこか儚げな印象を与えるのに、薄ら赤い瞳は爛々と光っていた。イズナと同じ位の少年に見えるが、その目は隣に立つ父と同様、鋭くイズナを睨みつける。敵意が剥き出しの表情だった。

四人は互いに睨み合う。一触即発と見られる状況。それぞれ反対岸からマダラと柱間もその状況をどうにかしようとしていた。


「「!!」」

その瞬間、パシャリと水が小さくはねたかと思うと四人の間にまるで突然現れたかのように人間が現れる。その場にいた全員が何事かと態勢を低くする。


「センリ………なぜ着いてきた」

四人の間に割って入ったのはセンリだった。タジマが脅すようにセンリを見やる。マダラもイズナも驚いて目を見開く。


『大丈夫だよ。ちゃんと分裂体置いてきたから』

そんな状態でもセンリは普段と何ら変わりない。いつも通りのセンリの声音にタジマは目を細めた。


「分裂体だと?」

『そっ。着いてきてよかったよ。まさかタジマくんが戦おうと考えてたとは思わなかった』


扉間は状況が理解できなかったが、千手の長である仏間には訳が分かった。


「なるほど……この女がうちはの隠し玉にして最後の切り札といわれる者か…」

やはりセンリの事は他一族にも広まっていたようだった。溢れ出るセンリのチャクラに瞬時に仏間は理解した。


「センリ、退きなさい」


そう低く言うのはタジマだ。今までセンリに見せたことの無い表情だ。


『嫌だ。どかない』

センリの頑なな言葉にタジマは舌打ちをする。


「仲間割れか?まあ丁度いい。まとめて今ここで…!」


仏間が走り出すのとタジマのそれは同時だった。


「「やめろ!」」


マダラと柱間の声が交差する。タジマが仏間に向かって繰り出す刀の刃を、センリは素早く腰から自分の刀を引き抜き、その刃を受け止める。キンッと刀同士がぶつかる音が響く。


「センリ、なぜ邪魔をする!」


タジマが声を荒らげる。軽々とタジマの刀を受け止めたセンリの後ろから仏間がさらにクナイを振りかざす。しかしセンリは視界の隅で子どもたちの姿を捉え、そちらに目をやった。


『イズナ!』


こちらもまたキン、という音がしたかと思うと大人達の横でイズナと、大きめの刀を振りかざす扉間とが相打ちしている。

センリが子どもに気を取られているうちにタジマと仏間が同時に刃を離したかと思うと二人は一斉に空中へ。そして二人が狙った先には−−。


『!!』


その短剣とクナイが向かった先はお互いの息子。

大人の二人は分かっていた。目の前で我が子が殺されれば僅かだとしてもその心に乱れが生じる。
刃先が二人の息子へと迫ろうとしていた。

センリが咄嗟に印を組み、イズナと扉間の前に光の靄のようなものが現れるのと、タジマと仏間が投げた刃が弾かれるのとはほぼ同時だった。

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