-僅かな記憶-
「姉さん、明日から少し■■■の家に泊まってくる」
「うん、大丈夫だよ」
「もうおれ十二歳だよ。姉さんがいなくても眠れるよ」
「わかった、姉さんおれがいなくて寂しいんでしょ。この広い家に一人になっちゃうし」
「……えっ?ほんとに寂しいの?」
「…………やっぱりおれ、あした日帰りで遊んでくるよ」
「だって姉さん寂しいんだろ。別にそんなに急ぎじゃないし」
「おれってシスコンかな?」
「ちょっと、笑うなよ。真剣に悩んでんのに…」
「だって仕方ないだろ。たった一人の家族だもん。大事にするに決まってるよな」
「姉さんすぐ人の事信じるし騙されやすいし…もっと人疑えよ」
「…え?疑って裏切られるより信じて裏切られた方がいい、って……まったくそんな事言ってるといつか詐欺に合うからな」
「そうなったら困るから俺が面倒見てやるよ。まったく、仕方ない姉さんだな」
「…おい!頭撫でんな!抱き着くな!」
「ったく、もう小さい頃とは違うんだっつの…」
「は?かわいい?俺が?」
「うるさいよ!」
「……なに、なんでいきなりお礼なんて」
「別に…。というかそれはこっちのセリフだから」
「なんでって…。姉さん、俺たちの生活の為にずっと働きっぱなしだろ。家の事手伝うのくらいどうってことない」
「この間の運動会の時だってほんとは仕事あったんでしょ?」
「姉さんが来るとみんながうるさいから俺と話す時間がな……いや、なんでもない」
「姉さん」
「いつもありがとう」
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