-マダラと柱間、うちはと千手-
「腑を見なくても分かるんだけどよ」
「何?」
マダラがふと隣に立つ柱間を見て思いつく。
「髪型といい、服といい…ダッセーな」
マダラがハンと鼻を鳴らすと柱間はずぅーんと落ち込んでしまった。
『酷いマダラ!どう見てもかわいい服でしょう!』
センリにはマダラも柱間の服も変わらないように見えたが、マダラにとっては時代遅れそのものだったらしい。
「そうだぞ!このかわいい服のどこがダサいんだ!」
「開き直るな!それからセンリのセンスはおかしいからアドバイスにならない!」
『ええっ、なんでっ!』
三人は前に初めて会っただけとは思えないほど息がピッタリだった。
それから三人は時々会うようになった。運良く戦もそれほど活発ではない時期になったという事もあり、センリはマダラと一緒に堂々と出かけることが出来る。
柱間の姓は知らないし、柱間もマダラとセンリの性は知らない。センリの性を知ったところで、というのもあるが、マダラが黙っていた方がいいというのでそうした。
マダラが家族以外にこれほど人に心を開くのは珍しかった。
センリは二人が技を競い合うのを見たり、三人で語り合ったりもした。
マダラはすでに大人を出し抜くくらい強かったが、柱間はそのマダラよりも実力があった。組手でもいつもギリギリでマダラが負けるのだった。
しかしマダラは生粋の負けず嫌い。いつでもタダでは参らなかった。
「センリも忍ならオレの相手してくれよ。オレが実力を見てやる!でも、女だからって容赦はしないぞ!」
ある時高い崖の上で柱間がセンリに提案する。センリは二人を見るだけで力を競ったことはなかった。
『えっ、私と?んん…分かった、いいよ!』
センリは岩の上からピョーンと飛び降りる。柱間はセンリの強さを知らない。マダラはそれを横目で見てニヤニヤしていた。
「…知らぬが仏」
「えっ?マダラ何か言ったか?」
柱間が向こうから叫ぶが、マダラは何も言わない。
「…それじゃ、センリ、行くぞ!」
センリが柱間の方を向くとすぐさま柱間が向かって走ってくる。
…なるほど。見ている時以上に太刀筋がいい。勢いもある。マダラもだが柱間もその辺の大人よりも強いだろう。まるで子どもとは思えない。
「…!」
柱間の蹴りをセンリが軽々と受け止めると、柱間は驚いたように二、三歩下がる。と思ったらすぐに拳が飛んでくる。
勢いだけで向かってきているように見えて柱間の攻撃は正確だった。そもそものチャクラ量がかなり多いせいか、攻撃の一つ一つもとても重い。
しかしどの攻撃もセンリの目にはスローモーションのように見える。それに柱間の組手の仕方や癖は今まで見てきて大体が分かっていた。柱間の攻撃はスピードがあるが、そのスピードよりもさらに速く動けば柱間の拳を止めることは簡単だ。
センリは柱間の拳をサッと避けると、次の攻撃を出される前にその手を素早く掴み、柱間の足を掬って倒し、いつものように頭をぶつけないよう寸でで支えた。柱間は尻餅をつき、くぐもった声を出す。
「嘘だろ……全然当たらなかった……うう…見た目によらずセンリってつえー…」
そら見たことかとマダラが笑いながら岩から降りる。
『柱間もとっても強いけどね、ありがとう。まあ長く生きて…――』
「センリ…!」
長く生きてるからね、と言いそうになったセンリの声を慌てて小声でマダラが遮る。マダラは案外用心深いのだ。
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