-マダラと柱間、うちはと千手-
二人がいつものように川辺に行くと、そこには先客がいた。
柱間の後ろ姿に、二人は近づいた。
『柱間くん』
「よう、久しぶりだな」
二人が座り込むその背中に向かって声をかけるが柱間は川を眺めたままだ。なにか思いつめているようだった。センリとマダラは何事かと顔を見合わせる。
「何だよ。今回はいきなり落ち込んでんじゃねーか……何があった?」
マダラはその背中に向かって問いかける。
「逆に何だよ…オレは元気ぞ」
「嘘つけ、何だったら話してみろよ」
「別に………」
「いいから、言えって!」
「イヤ……何もねーって…」
「いや引っ張りすぎ…聞いてやるっつってんだから……」
「ホント何でもねェーって……」
何も無いと言い張るが、振り返る柱間の顔は涙で濡れていた。
「さっさと話せやぁ!」
マダラはハッキリしない柱間についに声を荒らげる。センリはそんなマダラを制する。
『そう怒んないの。柱間くん、何かあったの?』
センリが優しく問うと、柱間はまたじっと川を見つめる。
「弟が……死んだ…」
柱間はそう、小さな声で言った。マダラとセンリがハッとして柱間を見る。
「ここへ来るのは…川を見てると心の中のモヤモヤが流されていく気がするからだ…」
センリは柱間に近寄りその背中にそっと手を置く。
『そっか………頑張ったんだね、柱間くん』
センリの言葉に柱間は涙を堪える。今まで優しい言葉をかける大人なんていなかったからだ。背中を優しく摩るセンリの手はあたたかく、それを振り払うこともしなかった。
「マダラとセンリ…だっけか……お前たちは姉弟なのか?」
涙を袖で拭き取りながら柱間が二人を見上げる。
「いや、違う」
マダラが即答する。
『ええっ、酷いなマダラ。姉弟みたいなものでしょう』
センリが驚いて言うのを横目に見ながら、石を探すマダラ。
「だけど家族みたいなもんだ………だが、俺たちは忍だ。今の時代…いつ死ぬかも分からねェ」
マダラはスッと川のそばへ移動する。センリと柱間は黙ってその様子を見る。
・・・
「お互い死なねェ方法があるとすりゃあ……敵同士腹の中見せあって隠し事をせず、兄弟の杯を酌み交わすしかねェ」
それはマダラがいつもセンリに言っていることだった。
「けどそりゃ無理だ……人の腹の中の奥……腑までは見るこたぁできねーからよ…本当は煮えくり返ってるかも分からねェ」
マダラは川に向かって石を投げる。ヒュン、と風を切る、鋭く爽やかな音がした。
「腑を見せ合う事は出来ねーだろうか…」
柱間がポツリと呟く。石がパシャッと音を立てて水の上を走る。
「分からねェ…ただ俺はいつもここでセンリとその方法があるかないかを願掛けしてる」
マダラの放った石は途中で消えることなく、向こう岸まで届いていた。反対側の石達にぶつかり、カツッという音が聞こえた。
『あっ』
センリがそれを見てびっくりする。
「今回は、やっとそれがある方に決まったみてーだぜ。お前だけじゃねえ。俺も、届いた」
マダラがそれを見届けて誇らしげに言う。センリはそれを見て何だか少し嬉しくなった。
『やったね、マダラ』
センリがマダラに向かってグッと親指を立てるとマダラが「ああ」と笑う。
柱間も完全に涙を流し終わり、立ち上がる。その顔からはもう既に悲しみは消え去っていた。
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