- ナノ -

-うちは一族と光の巫女-



その日の夜、マダラの要望通りに稲荷寿司を作った。味がしっかり油揚げに染み込むようにひっくり返し煮込み、そこに椎茸やニンジンを混ぜ込んだ酢飯を詰める。センリも久しぶりに料理という料理をしたのでとても楽しかった。


「美味しい!」


一口食べてイズナは感動したようにセンリを見る。三人でテーブルを囲み、稲荷寿司を食べる。


「こんな美味い稲荷寿司を食べたのは初めてだ」


マダラも絶賛してくれた。稲荷寿司は元々マダラの好物だったらしく、油揚げの中に混ぜご飯が入っているものは初めて食べたらしい。大人びていたマダラだったがこの時ばかりは子供心が目に見えて分かった。


『本当に?良かった』


こうも美味しい美味しいと食べてくれると作った甲斐があるというもの。二人は沢山作った稲荷寿司を綺麗に残さず平らげてくれた。

夕飯のあと、風呂の時間になってもタジマは帰ってこなかった。そういう日は割とあるようで兄弟はちゃんと自分達で食器を洗い、寝る準備をした。


―――――――――――――――――――

『ええっ、三人で入ろうよ』


風呂の時間。いつもタジマとは別に入るというのでセンリが三人で入ろうと提案したが、なぜかマダラがとても恥ずかしがっていた。


「兄さん、みんなで一緒に入ろうよ」


イズナが何だか楽しそうにマダラの背を押して風呂場へ誘う。


「だけど…センリは今日会ったばかりなんだぞ」


七歳だというのにその辺はしっかりしているマダラ。だが結局はセンリとイズナに無理矢理風呂場に連れていかれた。


風呂場は大人一人と子ども二人で入ってぎりぎりの大きさだった。
イズナは真っ先に裸になり、センリが服を脱ぐのを待ち切れないように手を引いた。まだどちらも幼い子ども。センリには恥ずかしさの欠片もなかった。
マダラはまだぶつくさ言っていたが結局丸裸になり、二人に続く。そしてセンリを風呂椅子に座らせイズナはその後ろに立つ。


「センリ姉さん、髪の毛洗ってあげる!」

いうが早いが石鹸を泡立て始める。マダラはイズナの後ろで淡々と体を洗っている。


『ありがとうイズナくん。でも長いから大変だよ』


背中まである長い髪を一生懸命洗うイズナをチラッと見てセンリは笑う。


「大丈夫………うわあ、センリ姉さんの髪すごいさらさら」


イズナがセンリの髪を梳かしながらそれを掬って羨ましそうに言う。センリの髪はとても細く、長いのに指に絡まること無くさらさらとすり抜ける。イズナは自分の髪を触るが明らかに質が違った。


「じゃあ流すよ。目、とじててね」

イズナは桶にお湯を汲み、センリの髪の上から掛ける。髪を洗い終わるとイズナは腰に手を当てとても満足そうだ。


『上手だね、イズナくん。次は私が洗ってあげる』


センリが自分の前をあけるとイズナが目を輝かせてそこに座る。四歳の男の子の頭は小さい。センリは丁寧にイズナの髪と体を洗う。イズナはとても気持ち良さそうだ。


「あっ、兄さん一人だけお風呂に浸かってずるい!」


マダラは一人だけ体を洗い流し、湯船に浸かっていた。イズナはセンリに体を流してもらいすぐにそこに飛び込む。


『ええっ、じゃあ私も』

センリが入ると湯船の湯がざぶざぶと流れ出た。


「センリのせいでお湯が無駄になった」

マダラが言うとセンリはマダラの首に腕を回し絞める真似をする。


『なんだと!ええい!ヘッドロックをくらえ!』

「おい、やめろ!お湯が減る!」


その様子を見てケラケラと笑うイズナ。
今日の朝初めて出会ったとは思えないくらい仲良くなった三人の笑い声が浴場に響いていた。

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