- ナノ -

-うちは一族と光の巫女-



センリはマダラたちの家に案内してもらい、生活についてを教えて貰った。

まずは炊事関係。驚いた事に台所とわかるそれがあり、コンロも水道も付いていた。しかしガスではなく、自分たちの術で火をつけるらしい。うちは一族は火を扱うのがとても上手いそうだ。

水道もちゃんと通っている。そしてトイレは和式だが、立派な風呂もある。トイレについてはセンリには必要無いものだったが、今までの暮らしぶりを思い出すと技術の進化に感動した。もし水が出なくなればこちらも術で何とかするらしい。


これは本当に時を超えてきてしまったらしい。センリとハゴロモたちがいた時代からはかなり進化しているようだった。センリが元々いた世界での生活にかなり近い。


それからセンリが感動したのは食料だ。集落の中には八百屋や魚屋もある。その人たちがどこから仕入れているのかと言うと畑で栽培したり漁をしに行ったり…旅の食料売りから買ってそれを一族で分け合う。
そして驚くべきはその品揃えだ。


『マッ、マダラ!見て、豚肉がある!ええっ、油揚げも…卵も……ああっ、パ、パンも…!野菜も調味料もこんなに!』


財布を持ってきて食料を買う。店の前でセンリが感嘆して目を輝かせるのでマダラとイズナはびっくりした。

「お前…過去からきたとか胡散臭いこと言ってたけど、本当なのか?そんなに感動するなんて…」

『感動だよ!今まで魚に塩振って焼いたのとか、猪肉を丸焼きにしたのとかがご馳走だったんだもん!』


目を潤ませながら本当に嬉しそうなセンリを見てマダラとイズナは少々気の毒に思った。


『さっそく今日から働くよ!お昼と夕飯は何にしよう?』

数ヵ月前に手伝い人の老婆が亡くなってから家の事はマダラとイズナで協力してやっているそうだ。今日からはそれをセンリがやってくれるとあってイズナも嬉しそうだった。


「お昼は冷たいうどんがいい!夜は……」


イズナが威勢よく言って考える。するとマダラがセンリを見上げる。


「稲荷寿司」

ぼそっと口にするとじっとセンリを見る。夜は稲荷寿司がいいという事らしい。


「今日はお前が家に来る祝いだろ。稲荷寿司がいい。多分夜遅くまで父さんは帰ってこないから、三人で食べる事になるだろうけど…」


どうやらセンリが一緒に暮らすのを祝ってくれるようだ。


『ありがとうマダラ。じゃあお昼はおうどんで夜はお稲荷さんね!決定!』


―――――――――――――――

約束通りその後うどんを作り、午後はイズナとマダラが一族の中を案内してくれた。意外と広く、一族の人間も割といる。団扇のマークの旗が至るところに立ててある。

二人と同じくらいのこどもも何人かいた。みんなセンリのことを不思議がっていたが、頭領の息子であるイズナとマダラが一緒にいるので、すぐに警戒を解いた。


集落の周りは森で、塀に囲まれている。他の家もセンリがいた頃とは違い、高床式ではなく普通の木造の家だ。皆の服装もセンリとは違う。珍しがられたが、センリはずっと着ていたその服が一番着やすかった。

マダラも最初こそはぶっきらぼうだったが、その日、日が暮れる頃にはセンリにも笑顔を見せるようになっていた。それがセンリの魅力だった。

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