-うちは一族と光の巫女-
センリの体術の強さは組手を見るだけで分かった。タジマは写輪眼を使いずっと二人を見ていたが、センリの動きには全く無駄がない。攻撃を避けるのも一ミリの狂いもない。間違いなく腕の立つ忍…それもそうとうな実力を持つ忍の動きだった。
それに、センリの動きはまるで舞でも舞っているかのように美しかった。
「一瞬、あなたが消えたように見えたのですが」
タジマは戦いを思い返し、ふとセンリに質問する。マダラもそれが不思議なようだった。
『あれは簡単に言えば光の速さで移動してるの。光速移動って感じかな』
センリがニッコリして言うとタジマもマダラも驚いた。
「通りでこの写輪眼を持ってしても見えなかったわけだ……」
タジマが呟く。うちは一族の者達も興奮したようにざわめいている。
その後の剣術はタジマが相手をした。
だが結果は見ずとも分かる。センリの剣さばきもまた踊りを舞っているかのように美しく、そして洗練されていて無駄がない。大人の男を相手しているとは思えないほどだ。タジマの刀の刃先は一瞬にしてセンリに振り払われてしまった。センリは約八十年もの間修業をしてきたのだ。適うはずもない。
そして弓術。今の時代、弓を使う人間はほとんどいないらしい。しかし、タジマたちはセンリの体の動きを見てみて弓についての腕も達者だということが安易に想像出来たようだ。
「センリ、あなたの実力はそこそこ分かりました。体術、剣術を見れば大体分かる…。かなりの実力をお持ちのようだ。恐らくはこのうちはの忍でさえ………。これではさらに光の巫女だと信じざるを得ない状況になってきましたね」
タジマの後ろにいるうちは一族でさえ尊敬の眼差しを向けている。
『修業はたくさんしたからね』
センリがガッツポーズをする。
その時演習場に若い女性が息せき切って走り、こちらに近づいてくる。
「タジマ様!川の向こうに千手の者が姿を現したと…」
タジマの前にたどり着くと呼吸を整えながら女性が言う。タジマの顔が一瞬で変わる。
「なんだと?偵察か……そんなに近くまで来ているとは…」
タジマは恐ろしく険しい表情で呟く。他の者達も顔を見合わせ心配そうだ。そしてマダラとセンリに向き直る。
「悪いが私は少し出てくる。マダラ、センリに色々と教えてやりなさい。絶対に一族の集落から出ないように」
『えっ』
そう言うと足早に演習場を出ていってしまった。他のうちは一族の者達も急いで後についていく。センリは質問をする時間もないまま、マダラと共に演習場に取り残された。
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