- ナノ -

-うちは一族と光の巫女-



センリが次に連れられて行ったのは森に囲まれた広い空き地、演習場のような場所だ。半径三百メートルはある。そこではうちは一族の者達が数十人ほど修業に励んでいるようだった。


「ここはうちはの演習場です。ここで皆修業に励み、来たる戦に備え、日々高めあっているのです」


タジマが演習場の中を進むと組手をしていた者達が手を止め、頭を下げる。タジマはそれを手で制し、演習場の真ん中に立つ。


「あれが…」

「他の者が言ってる事は本当だったのか」

「凄まじいチャクラを感じる…」

「まるで人間ではないようだ」

「美しいな…」


先程のようになにやらコソコソと囁く声が聞こえるが、センリは全く気にしていないようでルンルンと鼻歌を歌っている。

タジマの横にセンリが立つ。マダラも何も言わずに着いてきていた。


「何か忍術は出来るのですか?」


タジマの突然の言葉にセンリは一瞬ポカンとしたが、すぐに考え始める。


『忍術……って言ってもよく分からないんだよね…。体術とか剣術とか…それから弓術もそこそこできるよ』


センリが言うとほう、とタジマが興味深そうに顎に手をやる。


「では手合わせしてもらいましょうか。マダラ」


タジマは後ろを振り返り、息子の名を呼ぶ。マダラは一瞬怪訝そうな表情をした。


「この女と?」


まさかマダラは自分と手合わせするとは考えていなかったようだ。センリもびっくりしてタジマを見る。うちはの者達もその様子を遠巻きにみている。


「マダラはまだ七つですが、その実力は大人の忍をも凌駕するときがありましてね。あなたの実力を見るには申し分無い」

『でも…』


タジマはニヤリと笑うがセンリは戸惑った。マダラはセンリより遥かに小さい。しかもまだ子ども。
しかし迷っているセンリとは裏腹に、マダラは前に進み出る。拒否権はないようだ。


「本気でやれよ」


マダラはセンリを見上げて小さく言う。その態度は様になったものだが、どうやら女性相手に組手など舐められたものだと、そう感じているようにも思える。センリはため息をつき、マダラに向き直る。


「組手だ。武器は使わないよう。それでは、始め!」

口を開く間もないままタジマが号令をかける。
瞬間にマダラはセンリに向かってくる。


『(みんな手が早いというかなんと言うか…!)』

センリは内心少し呆れながらも目の前のマダラの動きを読む。父が推すだけあって確かに蹴りも拳も正確で動きも早い。的確にセンリを狙っている。七歳の子どもが放つ攻撃のレベルではない。


シュッ、と空気を切る音がセンリの耳元で聞こえる。早く終わらせてやると思っていたマダラだが、センリが意外にもしぶといのでどうやら本気モードになったようだ。


『(これは…インドラが子どもの時より強いかも)』


マダラの拳が目の前に現れたかと思うと瞬時に後ろに移動した。が、センリは後ろを向かずともその気配を察知し避ける。マダラは驚いたように目を見開き、距離を取る。


「お前……写輪眼じゃないのに後ろが見えるのか」


うちはの者達とタジマはその戦いを驚嘆し、眺めていた。マダラの実力は皆知っていたし、組手のレベルも相当高い。肉眼では見切れないほどだ。それなのにセンリには未だに拳一つ掠めていないどころか、まるで遊ばれているようだ。


『いやいや見えないよ!勘、ってやつかな』


ヘラヘラと笑うセンリにマダラはムッとする。自分の攻撃を一つも喰らわない上に、全く息切れもしていない。その上この状況でも余裕綽綽で笑うセンリを一睨みして、マダラはまた向かっていく。


「…!?」

すると蹴りを繰り出したマダラの目の前からセンリが消える。そして、


「…わっ」


突然センリがマダラの後ろに姿を現した。それと同時にセンリはマダラの足を引き倒す。が、マダラの頭が地につく前にそれを支える。マダラの負けは目に見えて分かった。


「どうやら私の息子の負けのようですね」


それを見ていたタジマが二人に歩み寄ってくる。なぜか満足そうだ。


『大丈夫?』

センリは膝をつきマダラを覗き込むがマダラはそっぽを向く。


「…大丈夫だ」


本気でやっていたにも関わらず、素性もわからない、加えて女性であるセンリに一度も触れられず、さらに負けたことが悔しいようだった。

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