- ナノ -

-戦国時代-



タジマの腕の大きな切り傷を治しながらセンリがその顔を見上げる。


『ねえタジマくん、なんで私は戦場に行っちゃいけないの?』


タジマはセンリが戦場に出ることを望まなかった。センリはその意味が分からずに今まで従っていたが、戦が再開して数ヶ月。ついに痺れを切らしそれを問いかけたのだ。

突然のセンリの問いにタジマは鋭くセンリを見る。


「あなたの力は強大だ…。私達うちは一族は写輪眼で見た者の大方の力が分かる。センリ、あなたの力は底知れない。写輪眼を持ってしてさえ計り知ることの出来ない力……代々一族に伝わる伝承なだけある。戦に出ればその才能が開花し、かなりの戦力になるのは目に見えている」

タジマは大きく息を吐く。


『だったら……』

戦力になるというならなぜ行かせないのか、センリは訳が分からなかった。するとタジマは言うか言うまいか迷っている仕草をしたが、結局その重い口を開いた。


「強すぎる戦力というのは前線に出れば必ず敵の者達も気付く。現に今もいくつかの一族にはセンリの事は知れ渡っている。そう、戦に出ていないのに、だ」


センリはタジマが何を言いたいのかまだ分からなかった。


「あなたはそもそもはうちは一族の人間ではない……どんな怪我も治す事ができ、どんな人間よりも強いチャクラを持っている。未だに私でさえ同じ人間なのかどうか分からなくなる時もある……それくらいあなたの能力は稀有なのです。それが他の一族中に知れ渡り、そんな状態であなたが戦に出たとしたら…」


そう言うとタジマは一旦口を噤む。センリは答えを急かす事はせずにじっと待つ。


「………この乱世です。狙われる事は目に見えている。さすがにこのうちは一族の里まで襲ってくる輩はいないにしても、どこで何があるかは分かりません。戦の中では我々も戦う事に精一杯でセンリに注意を払うことは難しい。もしも戦に出てあなたが何処かの輩に囚われるような事があれば……」


タジマは危惧していた。強大すぎる力はほぼ確実に、絶対に狙われると。だからセンリを戦に出したくないのだ。


『私は誰かに捕まったりしないよ。確かに重傷者を治せる人間がいなくなるのはうちはの人達にとって困る事なのかもしれないけど……』


タジマの話に耳を傾けていたセンリが真剣な眼差しで言い返す。


「あなたがいなくなれば今よりずっと死傷者が増えるでしょう………だが、それ以上に、一族の者達自身がそれを望んでいない。あなたが本当に一族を救う巫女なのだとしたら…手放したくはない。それは一族中の者が思っていること」


センリは珍しく心配そうなタジマの顔を見る。嘘ではないようだった。タジマは戦に出るようになってから疲れが顔に出てきているのか一気に老けたような気がした。


『でも……―――――』


それでもセンリはすぐには納得しなかった。内に篭っているばかりではわからない事もある。しかしタジマはそれを許可しなかった。


「とにかく戦に出るのは絶対に駄目だ。もしその時が来るとしたら、本当にうちはが壊滅状態になった時でしょう……」

タジマは立ち上がる。そして「そんな時が来るのかは分かりませんが…」と呟くように言って外に出て行ってしまった。

センリはため息をつく。突然現れた自分を引き取り家に置いてもらっている以上出しゃばった真似はしたくない。

確かにイズナやマダラもまだ幼く、センリ自身戦に参加せずに集落にいた方がいいのかもしれないとは思ってはいた。子どもたちにものの在り方を教える事もとても重要なものだと思っていたからだ。

そうは思うものの、うちは一族にいる時間が長くなればなるほど、一族の人間が次々に死んでいくのを見るのは辛いものになるのだった。

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