- ナノ -

-戦国時代-



それから持ち前のセンリの明るさで一族の皆とは確実に仲を深めていった。一族の上役たちがセンリの事を話したのか皆センリを尊敬し、徐々に慕うようになっていった。

冷徹と言われているうちは一族だったが、やはりセンリの前ではそんな事は意味をなさない。


もちろん、何処の者かもわからないセンリが突然自分達の集落に来たことをよく思わない者も初めはいた。
だが自分たちの一族の長がその存在を認めている。タジマが訳も無く人を信用する忍ではない事くらい一族の者達は分かっていた。一族の長が認め、そして共に暮らしているということは、他の者達にとっても影響は大きかった。

それに、センリの花が咲いたような笑顔とその真っ直ぐな心は誰の心をも魅了した。不思議な魅力がセンリにはあった。

戦乱で、澱んでいた人々の気持ちはセンリが来てから見てわかるほど変わっていった。


『(ここがハゴロモ達といた時代の何年か後だとすれば……アシュラたちはどうなったんだろう?生活方式もだいぶ違うみたいだし……ここの人達は大筒木の事を知らないみたいだからどうしようもないんだけど……なんでだろう、マダラはインドラに少し似てる気がするんだよね。気のせいかな?やっぱりうちは一族は……――――

…なににせよ、とりあえず私は生きてる。カルマに会えるまで、なんとかこの時代を生き抜こう)』


――――――――――――――――――

しかしセンリが来てから三ヶ月後、ついに戦争が再び始まった。

タジマはよく家をあけた。
長であるタジマは他の忍達と一緒に月に何度も戦に出向いた。タジマはセンリが戦に行くことを許さなかったので、センリは他の一族たちや戦の状況がまるで分からなかった。

その代わりセンリは負傷して帰ってきた忍たちの怪我を治した。怪我の状態でいま時代がどんな状態なのかは薄々分かってきた。

おびただしい血を流して帰ってくる一族たちをセンリは必死に介抱し、傷を治した。その能力は医療忍術というらしい。


だがセンリのその力は治癒忍術とは少し違っていた。傷を治す、というよりは元に戻すと言った方が近い。センリが、怪我した箇所に手をかざすしチャクラを流し込むと、傷を受ける前の状態に戻るのだ。
元に戻すだけなのでその人が元からもっている傷や病気までは治せない。それに傷自体を元に戻すだけなので、明らかに失血死間際の者は治す事は出来なかった。

だがこの力は相当役に立っていた。「明らかに戦死者は減った」と常にタジマが言っていたからだ。

これは不死鳥であるカルマの力だったので使えないと思っていたが、どうやら側にカルマがいなくても行使できるようだった。


「ありがとうございます、センリさん……あなたがここに来てくれて、本当に良かった」


傷を治してもらった者達は皆口々にそう言うが、センリは、本当にこれでいいのか正直なところ困惑もしていた。

皆はセンリを一族の救いの女神だと、勝利への女神だと、とても敬った。感謝をしてもらうのは確かに嬉しい。だがセンリは果たしてこれが正しい道なのかどうか、心のどこかでは疑問だった。

帰ってきた者達の傷を治せばまたその者は戦に駆り出され、次新しい傷を抱えて戻ってくる。運が悪ければそのまま死ぬかもしれない。

根本的に状況を変えないとまるで終わりがない。永遠にその繰り返しだ。まさかこのような戦の時代を経験する事になるとは、思いもしていなかった。


マダラも大人達ほどではないが、戦に出る時があった。それを送り出すのがセンリは辛かった。マダラが戦いに行った日は、イズナと一緒に待っている時間がとても長く感じる。


センリがどんな深い傷でも治すので毎回少ないが、何人かの死者も出た。遺体を埋める穴を掘る皆の姿を見るとセンリは哀しくなった。しかしそんな中でも必ずマダラは帰ってきた。

マダラが戦に出た日の夜は必ずセンリとイズナと一緒に眠るのだった。マダラの小さな手が自分の服をギュッと握る度センリは胸が痛む。


「…センリ」


マダラは囁き、センリの手を自分の頭へと導く。それは頭をなでて欲しいというマダラの言葉無き要求だ。センリは微笑んでマダラの少し硬いその髪を、自分より小さな頭を、スッと撫でてやる。不安の棘を取り除くように、愛情を込めて、優しく、優しく。
そうするとマダラは安心したように目を瞑り、眠りにつくのだった。

普段は勝気に振舞っているマダラだったが、この時ばかりは自身を覆い隠している鎧を捨て、センリにぬくもりを求めた。それは普通の少年と何ら変わりない、本来の姿だった。

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