-うちは一族と光の巫女-
「少し、あなたの事を教えてくれますか?一族の者達の大多数もあなたが光の巫女だと信じてはいますが……正直唐突な事ですから」
タジマがセンリに視線を戻し考え付いたように提案する。
『そりゃそうだよね…。突然空から降ってきたって言うんだからみんなびっくりだよね。私もびっくりしてるんだけど』
センリが頭に手を当て苦笑いした。
『まず…私のことを言うと……たぶん、さっき言ったように、私はこの世界の過去からここに来たと思うんだよね。何年前かは分からないんだけど……もし私がその巫女とやらであれば、その巻物はずいぶん前から伝わってるんだよね?私が生きていた時に“うちは一族”っていう人たちはいなかった……むしろこの今の時代の事を教えて欲しいくらい』
センリが困ったように言う。
「ふむ。写輪眼は知っていれど、うちはの事は知らないようですし………では今現在の事を教えましょう。今は、戦国の世です。それぞれの国が忍一族を雇い、一族同士で戦う……一族単位の戦いが続いています。私達うちは一族はその中でも一、二を争うくらい力の強い一族でしてね。一族特有の瞳術…あなたも知っていましたよね。この写輪眼を用する事が出来る唯一の一族です」
『うちは…』
センリはタジマの話に耳を傾ける。タジマはセンリの事を思ってかだいぶゆっくりと話してくれているようだった。
『あの、何個か質問してもいい?』
手を挙げて言うセンリにタジマは頷く。センリにはひとつ気になる事があった。
『忍宗って知ってる?』
だがその問いにタジマは眉を顰める。少し考えたが、首を横に振る。
「いや…聞いたことがない。それは一体なんです?」
『んと……簡単に言うとチャクラで心を繋ぐってことなんだけど。あなたもさっきからチャクラがどうとか言ってたから』
初めはよく分からなかった様だがその言葉を聞くとタジマはああ、となにか理解したようだ。
「チャクラとは忍術を生み出すための精神エネルギーです。チャクラを知っているという事はやはりあなたはこの世界の人間と見て間違いはなさそうですね」
センリの表情が少し明るくなる。
『術ね!それなら知ってる!印ってものを使うんだよね』
センリが手を使って子の形の印を作ってみせる。しかしその動きはまるで初心者のようだ。
「その様子だと印を組んだ事がないようですね……あなたの力には興味がある。何せ巻物にわざわざ記すくらいですからね」
タジマが笑うがあまり良い微笑みではないように感じた。そして唐突に部屋の入口を見て声をかけた。
「…マダラ、そこにいるのだろう。随分と気配を殺すのが上手くなったが…私が気づかないとでも?」
一瞬なにもないように思えたが、入口に少年がスッと姿を現した。それはセンリが昨日出会った少年だった。
「父さん……少し気になって」
昨日会ったマダラと呼ばれた少年はタジマの息子のようだった。どうやら二人の話を聞いていたようだ。
『あっ、昨日の……あの時はごめんね。起きたばっかりでなんか夢と勘違いしちゃったみたい』
センリが申し訳なさそうに笑うとマダラはじっとセンリを見た。
「別に…気にしてない」
マダラはぶっきらぼうにそう言った。よく見ればその少し大人びた、不機嫌そうな表情はタジマと微かに似ていた。
「丁度いい。センリ、あなたの力を見せてくれますか?それが気になったのだろう?マダラ」
タジマはセンリに言った後、息子を見る。マダラは少し迷っていたようだったが、頷いた。
「ここでは少々狭い。場所を移動しましょう」
タジマはそう言うと移動をセンリに促した。センリはまたタジマの後を付いていく。その後を少し離れてマダラが付いてくる。
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