-再びの不死鳥-
「……もうそろそろ起きる時間だ」
カルマが白い、何も無い空間を見上げながら立ち上がった。
『よかった!』
センリは満面の笑みで同じく立ち上がる。
「力を抑え込むカグヤの呪いも効果に波があるようで、弱まったり強まったりを繰り返しておる。とにかく、おかしいと思ったら極力大きな力は使うな。我も早めにこの状態に慣れるように努力する」
カルマは最後にセンリに忠告する。
『うん、分かったよ』
詳細がすべてセンリに伝わったかどうかは怪しいところだったが、どうやら重要な部分は理解したようだった。
「それに、御主も気になっているであろう“光の巫女”についてだが……正直我にも分からぬ。御主の事はハゴロモ…六道仙人と共に確かに、陽光姫として伝わってはおる。チャクラを世に広めたのはその二人だという事も……しかし今現在それは神話として語り継がれているに過ぎん。ハゴロモが実在した人間だという事はここの者達は知らぬ。
うちはの巫女については、十中八九インドラが書き記したものかと推測するが、確証はない。センリが何年も生きると分かっていて、自分達の一族の力になって欲しいとそう伝えたかったのかは…確証が持てないところではある。まあ…御主が光の巫女としてうちは一族に伝わっていたことは、今では良かったのかもしれんな」
センリが前に聞きそびれた事を分かっていたのかカルマが神妙に言った。
『そっか……カルマでも分かんないんだね。でも確かに今は、本当にうちは一族の人達と一緒に過ごせて良かったなって思ってるよ』
嘘のないセンリの表情を見てカルマも微笑を返す。そして頭上の白い空間をじっと見上げた。センリには本当に全てが同じ白に見えている。
『どうしたの?』
センリも同じように見上げるが、辺りには白が漂っているだけだ。
「……御主が目覚めた時、御主自身の涙を使うと良い」
『?』
再びきょとんとしたセンリの心臓付近にカルマが手を伸ばした。センリが他者にする時にそうなるのと同じように白銀のチャクラが注ぎ込まれた。
「何度も使えぬ力だが……。今、我にある全ての治癒力を御主に注いだ。御主が目を覚ましたのなら、“本当に必要な時に”自身の涙を使うと良い。ただし、この力によって“蘇った者”に代理は効かぬ。失われた能力が戻ることは無い」
『それって……?』
「あまり長居してはいられないようだ。さあ、それでは……」
カルマはセンリの言葉を遮り、手の平を差し出す。手を乗せろと言うことらしい。
辺りの空間が歪み始めたのが分かり、センリは慌てて右手をカルマの手の平に乗せる。
『!』
その瞬間センリの体が何かに力強く引っ張られる。一瞬、また誰かに呼ばれた気がしたが、体の内側から引き寄せられる衝撃に驚く暇もなくセンリは光の中に吸い込まれていった。
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