-マダラと柱間、うちはと千手-
「……」
いつもなら恥ずかしがって離れるマダラだが、今日は抵抗しなかった。センリの髪から香るいい匂いが鼻をつく。マダラはセンリの柔らかい体を拒否しなかった。
「じゃあ俺だってセンリを守る。センリが辛い時は側にいてやる。だから……」
マダラは唇を噛み締めすぐ近くにあるセンリのその顔を見つめる。センリは愛おしそうにそのマダラの頬を手で包む。
この時マダラも心に誓った。
センリを……センリの心を、絶対に守ると。
「(だからもう……そんな悲しそうに笑うな……)」
月の光に輝くセンリの表情は、どう見ても笑っている筈なのに、まるで今にも泣き出しそうだ。
何年も変わらない、自分の中にあるセンリの美しい瞳を見て、マダラは少し昔の記憶が頭を過ぎっていた。
――――――――――
停戦中だからと油断しすぎていたのが悪かった。いつもなら行かないような崖の下で、マダラは他族の忍に追われていた。
敵は十数人。まだ八つのマダラが相手にして勝てるのかどうかギリギリの手練だ。運が悪ければ殺られるかもしれない。
「!?」
ここは逃げるしかないと判断した直後、マダラの前に数人の敵が姿を現した。
「お前はうちはのガキだな?」
「運が良かった……お前みたいな子どもの力の芽は早いうちに摘んでおくのが吉だ」
「悪く思うなよ…」
本当に運が悪かった。マダラが、死を悟りながらもクナイを掲げたその時、突然周囲が白い光に覆われた。
「……っ」
目を開けていられない程の光にマダラが目を細めるのと同時に、何かが強く自分の身体を抱き上げていた。
「!」
一瞬敵に捕らわれたかと抵抗しようとしたが、優しい温もりと、覚えのある香りにマダラはその動きを止めた。
そして数秒間のうちに、辺りから光が消え、マダラが眩しさに目を凝らすとそこは先程までの場所ではなく、見慣れた森の中だった。
『もう大丈夫だよ』
センリはそう言って抱き抱えていたマダラをそっと降ろす。センリの微笑みを見た瞬間、マダラは突然緊張が解れ、急激に安堵した。
センリだ、と気付いた瞬間にはもう「助かったんだ」という不思議な安心感に包まれていた。
無条件に自分を守ってくれる存在というものが、これ程までに心強いものだと、マダラはその時に初めて知ったのだ。
―――――――――
それと同時に、別の感情も、確かにマダラの心の奥底に生まれていた。
「(俺は……センリに守られずに済むくらい強くなる……そうしたら、今度は、俺が……――――――)」
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