-描いた夢-



切り立った崖の下に着くとセンリは柱間から地図が描かれた巻物を受け取る。


『また柱間の木遁ちょっと貰っていい?』


この流れはもう分かっていたので柱間は快く右手を差し出す。今度はセンリは加減が分かっていたようで柱間の力が抜けていく感じはしたが、倒れはしなかった。


『よし。今度はちょっと時間かかるかもしれないけど…』


そう言ってセンリはまた地面に座り込む。辺り一体深い森だ。巻物を開き自分の前に置く。そしてセンリが印を結び始めると前の時同様、カルマのチャクラが纏い始める。それと共に物凄い圧倒的な力がセンリから放出される。十本の尾が完全に伸びるとセンリは印を結び終わり、巻物の上に両手を乗せる。



『(万物創造の術・創地!)』


前回の時よりかなり大きい、ゴゴゴゴゴという音とともに地鳴りが起きて地が揺れる。木々から鳥たちがバサバサと飛び立ち、マダラも柱間もよろめいた。砂が舞い上がり扉間は目を細める。そして森の至るところの木々が地面に戻り、そして次々に家や建物の形を縁取っていく。

かなり広い範囲だ。向こう側の山の方まで、目視では見る事が出来ないくらい遠い場所でさえも巻物に描かれた構図通りに創築されていく。三人がありえない光景に圧倒されているうちに地響きがだんだんと収まっていく。砂埃も収まるとただの森だったそこには数々の建物が現れた。


『よし、こんなもんかな』


センリからカルマのチャクラが消え、立ち上がる。後ろを振り返ると三人が驚嘆して口を開いていた。


「センリ……本当にすごいぞ」


柱間が声を絞り出すように発した。センリは後頭部に手を当てへへへと笑った。


『よーし、これでやっと皆ここに移動できるね!早速帰って知らせないと!』


センリが嬉々たる表情で顔の前で手を合わせる。センリは早くうちは一族の皆に知らせたかった。新しい、仲間との集落。休戦協定を結んでから三週間ほど経った。もう皆移動の準備を終わらせている。柱間も嬉しそうに頷く。


「そうしようぞ。千手の皆も、他の者達も皆待ち望んでいるからな」


様変わりした森の様子を眺めながら柱間が言った。


『うん!マダラ、早くみんなを連れてこよう』

センリはマダラに走り寄ってはにかむ。マダラも微かに口角をあげる。


「よし、扉間。オレ達も行くぞ!」


まるで同じような二人の反応を見てマダラはなぜか嬉しくなった。

これからこの新しい集落……センリが作り出した平安の地に暮らすことになる。大喜びしているセンリとともにうちは一族に帰る時、センリは本当に帰路中上機嫌だった。


その日の昼過ぎからすぐに移動を始めた。



移動は数日かかったが、それは無事に終わった。うちは一族も千手一族も他の者達も、隔離されることなく自由だった。マダラとセンリは一族の者達に他一族にこだわらずに好きなところに住むように言った。最初のうちは建物は有り余るほどある。どこに住むかは対して問題にはならなかった。


そしてマダラとセンリ、それからイズナの家はセンリが後から造った。センリの希望でよく出かける川がある森の近くだ。中心街からは離れてはいるがどうしてもセンリがそこがいいと言うのでマダラもイズナも了承した。今までよりも大きく、立派な家だった。始終センリは御機嫌だった。


やっと終わった。
長く続いた戦も。憎しみの連鎖も。


そしてここからまた始まる。
新たな未来。センリが夢見た未来。柱間とマダラが望んだ未来。それがやっと始まったのだ。


そしてうちはと千手が同盟を組み、それを筆頭としてその後火の国と手を組み、同等の立場で組織する里づくりが始まった。

子どもを戦場に送ることもない。厳しい戦いをすることもない。無闇に人が死ぬこともない。誰もが望んだものがそこには詰まっていた。


すべてが終わり、ここから、また始まるのだ。

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