- ナノ -

-見せ合えたハラワタ-



『柱間、マダラ』


センリが二人を交互に見ればどちらも同じように頷いた。

用意してきた双方の紋を印した旗を旗竿へと掛ける。マダラはうちはの旗の前へ、柱間は千手の紋の前へと立つ。そして二つの一族はそれぞれに分かれ、うちは一族はマダラ側に、千手一族は柱間の後ろへと分かれる。


センリはその二人の間に立ち腰に結びつけた荷物袋の中から巻物を取り出す。千手一族もうちは一族もじっと見守っていた。


『では………』


センリは皆を見回し、最後にマダラと柱間を見上げる。二人ともセンリを見る。センリは一度笑みを浮かべた後、その巻物を読み上げた。

マダラも柱間も、休戦協定の書状の内容を確認する役目……同盟を結ぶ為のその役目はどうしてもセンリにやって欲しかった。センリなしではここまで来れなかっただろうと二人ともそう思っていた。巻物を読み上げるセンリは表情は清々しく頭上の空と同じように晴れ渡っている。


これまでの争いを水に流し、これから互いに戦うことはしない事。うちは一族も千手一族も皆がその内容に同意した。


『……以上、協定の成立を証する為、ここに本書を保存する。ついては双方互いに本協定内容を尊守し以後一切異議不服を申し立てないこと、本協定に従い同盟を結ぶ事を誓約する』


センリは読み終わると巻物をゆっくりと巻き、元に戻し手の平に乗せるとそれはポン、と言う音を立てて煙に消えた。


『…仲直りの握手だよ』


センリは並ぶマダラと柱間の右手を共に取る。そしてそれを互いに握手を促す。マダラと柱間は目を見合わせ向き直り、そして長きに渡って戦い合ったその手で固く握手を交わした。

そこには悲しみも憎しみも無かった。ただ、マダラも柱間も、これからの未来を見つめていた。うちは一族も千手一族も微笑みを浮かべていた。


「今この時からうちはと千手は同じ同志ぞ」


握手を交しながら柱間がマダラに言う。今まで幾度もあった、二人の間の威圧感はもう無い。柱間は幼い頃の姿と今のマダラの姿を重ねて見ていた。やっと届いたのだ。


「……ああ」


戦の時の殺気の入り混じった声音ではない、穏やかな声だった。そんな二人の姿を見てセンリの胸に込み上げるものがあった。繋がれる事の無かった手は今、お互いに握り合っている。


『(ハゴロモ………見てる?私たちには出来なかったこと、今………叶ったよ。大丈夫…ちゃんとインドラは………マダラは分かってくれたよ。力だけじゃない……ちゃんと、分かってくれた。ここからまた、始まるんだよ。私、頑張るからね…ずっと見ていてね)』


センリには二人の姿がインドラとアシュラに重なって見えた。二人の本当の未来が今見えた気がした。じんわりと瞳に滲む涙に気付き急いで袖で拭う。柱間もマダラもセンリがこれを心から望んでいたと理解していた。


『良かった。本当に』


感無量で呟くセンリがそっと青空が広がる頭上に手をかざした。するとどこからか雪のようなキラキラしたものが皆の上に降り注いだ。誰もが不思議そうにそらを見上げる。柱間の手の平に一つの結晶が舞い降りるとそれは輝いてそして消えた。


「これは何ぞ?」


粉雪のようにも見えたが空は晴れやかだ。そして冷たくはない、煌めくもの。


『光だよ』


それはセンリが降らせた光だった。昼間に現れた蛍の光のようにそれは空から降り注いでいた。神秘的だった。マダラも柱間も、それからお互いの一族の皆も。しばらくその美しい光の心地よさに身を任せるように立ち竦んでいた。綺麗なそれはまるでセンリの嬉し涙だった。

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