- ナノ -

-見せ合えたハラワタ-



数日は瞬く間に過ぎ、三日後はすぐに訪れた。休戦協定を結ぶ為にうちは一族の方から今度は千手一族の領地へと訪れる日。

十月の朝の気温は少しだけ肌寒さを感じた。八時になる前にはうちは一族の者達も全員が集まり、そしてマダラが千手一族から送られて来た地図を頼りに先導し、センリはマダラの隣で感知し場所を的確に教え、そしてイズナが後方から着いてくる。


千手一族の集落までは休憩を一度入れながら二時間も走り続けていれば到着した。うちは一族の集落と同じように周囲を山に囲まれた場所にある。家々も様子もうちは一族と寸分違わない。ただその旗には千手一族の紋がはためいている。


今まで嫌というほど戦ってきた一族の集落に丸腰で行くなど、当たり前だがうちは一族の者達には少々ながら緊張感があった。顔を合わせれば攻撃を仕掛けあっていた者達と武器もなくこうして会っているのは何か可笑しささえ感じた。大体の者であれば互いに名前まで知っている敵同士もいる。

しかしそんな緊迫感も集落の入り口で長ににこやかに駆け寄っていくセンリの姿を見れば馬鹿らしくもなってくるものだ。


センリは集落に着き、千手一族を纏めてその一歩前に立っている柱間を見るなり笑顔で手を振って駆け寄った。


『柱間!』


あとからマダラが、その後ろからうちは一族の者達もゆっくりと歩み寄る。


「長旅ご苦労だった。思っていたよりも少し到着が早かったな」


マダラたちが近づいてくるのを待って柱間が皆に話し掛けた。その表情は晴れやかだ。


『二時間くらいだったよ!マダラってば一回しか休憩入れてくれないんだもん』


センリが朗らかに言えばマダラが隣から呆れたようにため息をついた。


「途中で物凄くデカいムカデを発見したとか言って道草くおうとした奴は何処のどいつだ?」


じとっと睨まれてそんな事を言われてもセンリはまるで気にしていないように笑った。


『…マダラだっけ?』


可笑しそうに笑いながらセンリが言えばマダラは腕を組み、顔を引き攣らせた。


「お前だろ!」


柱間も表情を崩して二人を見た。


「とにかく無事に到着して良かったぞ」


楽しそうに笑うセンリの姿が柱間は微笑ましかった。隣で神妙な顔をしている扉間はこの空気に慣れておらずどうしたものかと思っていた。

柱間と扉間の後ろにいる千手一族の者達は突然穏やかな雰囲気に包まれたことに驚きを隠せなかった。同時に戦い続けた一族のトップと自分たちの長が笑い合っているところを見て、本当に戦争は無くなるのだと改めて実感する事となった。お互いに忍装束でもない。武器もない。写輪眼もそこにはない。あるのは休戦協定という名の同盟だけだった。


『柱間、千手に来たうちは一族の人たちは…』


センリがふと柱間に小さく問いかける。柱間は少し考えたがすぐに思い付き後ろを見やる。

千手一族の影には亡命したうちは一族の者達が肩身も狭そうに立ちすくんでいる。本来ならばうちは一族に暗殺されてもおかしくはない。一族を裏切った懸念からか申し訳なさそうに下を向いている。しかしセンリは気にもしていない様子でその者達に近付き、その手を取る。


『無事で良かったよ。さ、こっちに…』


皆センリの笑みに目を潤ませる。センリはその者達をうちは一族のいるところへと促す。うちはの者達ももう気にしていなかった。何しろもう戦いは終わるのだから。


千手一族はあまりにも戦場で見たセンリと、今目の前にいるセンリが同一人物には見えずに、驚きを隠せなかった。

自分達が見てきたセンリは恐ろしく強く、常に鋭い光を瞳に宿していた。戦いにおいて隙はなく、誰もその身に触れる事は出来ないくらい強かった。


自分達がセンリによって救われていた事は分かっている。しかしそれにしても予想していた人物像を遥かに卓越していた。


長が信用するだけの事はある。

美しい外見とは裏腹にこんなにも明るく、馬鹿ともとれるくらい清々しい程の笑顔を浮かべるセンリの人柄がすぐに分かった気がした。

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