- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-育ての母として-



ミナトとクシナがナルトを残して逝ってしまい、マダラが長期任務の為に里を離れていってからセンリは両親に代わってナルトの世話をしていた。


初めは孤児院に預けた方が良いのではないかとコハルやホムラは言っていたが、ヒルゼンはその意見に賛成しなかった。木ノ葉内にももちろん孤児院はあったが、そこではもしもの時の為には対応出来ない。元くノ一が経営していたが、それでも九喇嘛が暴走した際に止められるわけもない。


センリはクシナからナルトを頼まれたあの時から、ナルトの側にいると、覚悟は決めていた。それを里の上層部に伝えると皆申し訳なさそうだったが、同時に納得もしていた。封印の確認、もしもの際の対応、それに養育者として、センリが適任だという事も、ヒルゼンはよく理解していた。

ナルトには知られぬように暗部の忍がその成長を見守っていたが、センリはそうではなくて、ほとんの親代わりのような存在となって、時間が取れる限りナルトの世話をしていた。


赤子の世話はもう慣れたものだったが、マダラが里にいない分、センリには相談役としての仕事もあり忙しい日も多く、影分身や分裂体を使わなくてはならない時も多々あった。影分身を作り出すことについてはなんの造作もなかったが、ナルトの世話の方は出来るだけ生身の体でするようにしていた。

あたたかい人の温もりというのは、子育てには欠かせない。立ち上がる事も出来ないナルトの小さな体をセンリがぎゅっと抱き締めると、ナルトも安心したように目を閉じて眠るのだった。


しかしヒルゼンからは「なるべくナルトが一人で生きていけるようにしてほしい」という要請も受けていた。その為にヒルゼンはナルトがこれから暮らすアパートの部屋を一つ買取り、センリはそこに通っている。

それからナルトには自分の親が四代目火影だという事、クシナの事、里を守って死んだ事は内密にとも言われたていた。幼いうち、特に感情の制御が出来ないうちにそれを伝え、もしナルトのチャクラが暴走すればまたクラマが里を襲うという事態になりかねない。


センリが側にいる時ならもちろん抑えることは可能だが、それがナルト一人だけの時に…、と考えると、やはりそうせざるを得ないのも事実だ。里の者達からの大きな反感を買う事にもなる。ヒルゼンにとっても苦渋の決断でもあった。

ナルトは何も知らないまま成長する事になるだろう事についてセンリは心配もあったが、ヒルゼンは「時が来れば全ての真実を教えたい」とも言っていた為、最終的にその意見には賛同していた。


然るべき時……その時が来るまで、必ずこの成長を見守ろうと、ベッドに寝転んで不思議そうに自分の指で遊んでいるナルトを見、てセンリは決心していた。


『(ミナトとクシナの為にも、ナルトの為にも、里の為にも……ミナト、クシナ……あなた達がいつかナルトが人柱力である事を乗り越えて、クラマと共に戦えると信じてこうしたのなら…ナルトに未来を託したのなら……私はそれを精一杯、支えるから…)』


キャッキャと自分を見て無邪気に笑うナルトの頬に浮かんだ髭のような模様。生まれながらにして九喇嘛のチャクラを宿している証だ。それをすうっと撫でると、ナルトはくすぐったそうに顔を歪めた後、小さな手がセンリの指をぎゅっと握る。


『(大丈夫だからね)』


心の中で繰り返す。
誰に向けた言葉なのかはセンリにも分からない。

友が残した命。大きくなった姿をどうしても遠くにいる二人に見てほしくて、センリはナルトの手をそっと握り返した。
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