- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-うちはイタチの独白-



それからうちは一族にはもう一人重要な存在がある。それがマダラ様だ。

表向きは警務部隊長の父が一族の当主をつとめているけれど、実質的トップはマダラ様だとみんなが言っている。オレはまだマダラ様の実力をあまり見たことがないけれど、父と話しているのを何度か見かけていて声をかけられたことはある。

マダラ様がなんで一族から一目置かれているのか、最初に会った時に理解した。

外見は父よりも若く見えるのに、眼が、全然違った。いくつもの修羅場をくぐり抜けて、過酷な世界を生きてきた…そういう眼だった。鋭くてどこか暗くて、オレが思っている事を見透かされているような、眼だけで圧倒されるような…――。

写輪眼じゃないのに、まるで幻術にかけられてるんじゃないかという感覚になって、幼いオレは足の裏が地面に張り付いたように動けなくなっていた。

“強そう”、ではなく明らかに“強い”んだと、一瞬で分かるような人だった。


まずはマダラ様を超えなければ、とすぐにオレは思った。同じうちは一族で一番強い忍。マダラ様の眼を見返しても足が震えなくなるくらいにならなければ、それ以上強い忍にはなれない。

その為にオレはマダラ様に会っても緊張を見破られないように懸命に振る舞っていたけれど、今、そのマダラ様は里にはいない。オレがアカデミーに入学する少し前に長期任務で里を離れてしまった。それに少し安心してしまっている自分が情けなかった。


でもそれからセンリ様に会う回数は少しだけ多くなった。センリ様も忙しい人ではあったけれど、父と母が不在の時なんかは弟の面倒を見てくれている事もあるくらい。たまに分身体の事もあるけれど…。



それで、これは最近知った事だけれど、センリ様とマダラ様は結婚していて。ご夫婦らしい。父から聞いた時は今までにないくらい驚いたけれど、それでも納得してしまう部分もあった。


二人からは何となく…本当に何となくだけれど、同じような空気を感じる事があったし、最近センリ様は時々……本当に一瞬だけだけど、遠くを見つめて物憂いげな顔をしている時があったからだ。

それは多分、マダラ様が長期任務で里にいないからだ。

センリ様が見つめる先には一体何があるんだろう。やっぱりマダラ様の姿なのだろうか。


そう考えるとたくさんの疑問がわいてきてしまう。


センリ様のキレイな眼には何が映っているんだろうか。

あの戦場は、センリ様の眼にはどう映っていたんだろうか。

忍の世界を、センリ様は、どう見ているんだろうか。



…強くなりたかった。

誰よりも強い忍になって、そうしたらセンリ様と同じものが見えるかもしれない。同じ目線で風景が見れるかもしれない。写輪眼を開眼すれば、今よりもっと……。



センリ様が見ている世界を、オレは、見てみたかった。
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