- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-不可解な存在-



葬儀が終わってすぐ、センリは倒壊した建物から人々を遠ざけるようにヒルゼンや警務部隊に伝えた。破壊された街を元に戻す為だ。



「本当に、そんな事が出来るのですか?」


壊れた街の中に空いた地面に腰を下ろしているセンリに向かって、フガクが信じられないというふうに問い掛ける。



『私が記憶している範囲では、って事だから建物とかその家の内部の細かいところまでは無理だけど……。あの辺りの街並みならほとんど覚えてるから、それなりに戻す事は出来ると思う』


どうやって、とフガクが聞く前に、センリは目を閉じて集中し始めたので固唾を呑んでそれを見守る。

ヒルゼンや数人の忍が一体どうするのだろうかと視線を投げ掛ける中、センリは一人記憶を辿り崩壊する前の情景をしっかりと頭に思い浮かべた。

一つ深呼吸をし、センリが目を開く。するとカルマの白いチャクラがどんどんと溢れ出て、十本の半透明の尾がセンリの腰周辺に現れた。


「(これが……伝説の不死鳥と呼ばれる……)」


今まで感じた事の無い強大な力に、ヒルゼンは一歩後ずさる。フガクも驚きに目を見開きその瞳が無意識に写輪眼に変わる。

力が完全に纏わり付くと、センリの体の下に術式が現われ、それを歯切りに長い印を次々に結んで行く。写輪眼でも追うのが困難な速さの中、センリは印を結び終わりパシッと右手を地面に付ける。


『(万物創造・再創築!)』


ゴゴゴゴ、という小さい地震のような揺れが地面に走ったかと思うとら粉々に砕け散っていた石壁が逆再生をしたようにひとりでに積み上がり、壊れた家屋が音を立てて建ち上がる。壊れた全てのものが自分達の元の場所を認識しているかのような、命を宿しているような、不思議な光景だった。

砂ぼこりを立てながら建物も元の状態に戻り、数分もしないうちに三日前までの風景がそこに現れた。



「い、一体−−−−」



何があったのか分からないというふうに辺りの忍達が驚嘆する。皆が開いた口が塞がらないという状況で立ち竦む中、大体元の状態に戻った事を確認して、センリはふっと力を戻した。白い半透明のチャクラが消え去り、術式も地面から消えた。


『さっきも言った通り、建物の中まではちゃんと戻せてないから…散らかった家具とかを元に戻さなきゃいけなくてみんなには申し訳ないけど……』


センリがヒルゼンに向かって言うと数秒遅れてその頭が動いた。


「ここまで元に戻す事が出来るなんて……これだけ直す事が出来れば、むしろ住人達は十分過ぎる程だと思う事でしょう」


何も無い場所から木造住宅等を出現させるには木遁のチャクラが必要だが、壊れたものを元に戻すだけならばセンリの力だけで十分だった。

驚きながらも感謝を述べているヒルゼンを見て、センリは僅かに微笑んで立ち上がる。


『…っ』


しかしその瞬間視界がぐらりと揺れて足に力が入らなくなり、センリは前のめりに倒れ、近くにいたフガクが咄嗟に受け止める。

突然の事に驚いてフガクは脱力してしまっているセンリの顔を覗き込むが、どうやら気を失っているだけのようだった。


「センリ様は今日まで寝ずにチャクラを使いっ放しでしたからな……それに加えてこれだけの事をすればセンリ様であれ流石に体力を消耗するじゃろう…。フガクよ、センリ様を木ノ葉病院まで運んで差し上げてくれ」

「は、はい」


今日の夕方にもマダラは木ノ葉に到着すると連絡があったので、それまでにどうにかセンリを回復させておきたいとヒルゼンは思っていた。相談役が揃ったら次に考えなければならない事がいくつかあった。


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