- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-九尾襲来-



警務部隊本部の前にはフガクと側近と警務部隊員が数名焦ったように話し合っていた。


『フガク!』

「センリ様…!」


センリが息せき切ってフガクらに近付く。チャクラを使えない状態での全力疾走はかなりきつい。センリは上がった呼吸をどうにか抑え込む。

幸いここはまだ九喇嘛の攻撃が届いていない。建物もほとんど無事だ。少し向こうの方に九本の大きな橙色が揺れている。


「警務部隊は里の警護と一般人の避難誘導をするようにと連絡がありました」


これ程までに険しい表情をしたフガクは初めてだった。かなり切羽詰まっているようだ。


「…うちは一族の写輪眼なら九尾を止められるかも知れません…!」


警務部隊の猿飛一族の若者が、フガクに詰め寄る。汗をかき、焦っている。


「何名かの忍は火影様の指示で共に戦っているだろう」

『普通の写輪眼じゃ九喇嘛は…尾獣は、どうにも出来ないよ』


センリの言葉にフガクは僅かに驚きを見せる。尾獣を操る事が出来るのは万華鏡写輪眼だけだ。“普通ではない写輪眼”が何か分かったフガクは神妙な表情になり、眉を寄せた。

センリにとって妙案ではなかったが、今の状況ではそうする他九喇嘛を止める術はないだろう。



『警務部隊のみんなは他の人を避難させて、それから怪我人の救護をお願い』

「わ、分かりました」


猿飛一族の忍はすぐに回れ右をして駆けて行った。

瞳術で無理矢理九喇嘛を従わせるなど出来るならセンリはしたくない。しかし今の九喇嘛はまるで誰かに操られているように我を失っている。これではまた九喇嘛が人間達を殺す事になってしまう。何とかして止めなければ、里も危険だ。



『フガク、私と一緒に来て』


フガクは迷い無く強く頷いたが、側近のテッカが口を挟んだ。


「ですがフガク様…−−!」


テッカの言いたい事は何となく分かった。
九喇嘛に近付けば、命を落とす危険性が極めて高くなる。今の時点で戦いを挑んだ忍達が何人死んだか分からない。しかし側近の制止を聞いても、フガクの表情は変わらなかった。


「オレはこれまで、一度として命を惜しむような仕事はしていない」

「隊長…」


強い力のこもった赤い瞳だった。フガクの強い決意に胸打たれた様子の側近は押し黙った。里のご意見番達がフガクを火影に推薦する理由が、よくわかった気がした。強い意志のこもった、瞳だった。



「行きましょう、センリ様」


フガクに深く頷いて、センリは再び九喇嘛の元へ向かった。
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