木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-九尾襲来-
センリが外に出た瞬間、背後に暗部の忍が現れた。
「センリ様……九尾が里に…!」
『分かってる。非戦闘員達をすぐに避難させるよう、指示を出して。警務部隊員には避難場所への誘導をお願いするように。それから子ども達は忍であっても九尾に近付かないように伝えて。その他のみんなは現場に!』
「分かりました!」
暗部の忍に手短に伝えると、仮面をした暗部はすぐに姿を消した。
『(九喇嘛…どうして…!)』
チャクラが使えない事は承知の上だったが、センリは九喇嘛が出現した付近を目指して全速力で向かった。とにかく、被害が出る前に九喇嘛を止めなければならない。
九喇嘛の姿が鮮明に見えてくると辺りの惨状は酷いものだった。
「一体何なんだ!?」
「九尾よ!九尾の化け狐だわ!」
「避難場所はどこだ!?」
「ダメだ!そっちじゃない!」
『第三演習場に避難して!家族や知り合いはなるべく一緒に!こっちの道は塞がれてしまってるから商店街を抜ける方の裏道から!大丈夫だから、落ち着いて避難してね!』
騒音の中、家々や塀が倒壊し、道だったところは瓦礫の山と化している。逃げ惑う人々で混乱が起きていた。まるで巨大地震に見舞われた後の惨状だ。
センリは辺りの騒音にかき消されないように声を張り上げた。人々は何とかセンリの言葉を聞き取り、次々と小道に入っていった。
センリは砂埃の中、目を凝らす。
道で母親とはぐれたのか「お母さぁん」と大声で喚いて座り込んでいる少年を助け起こす。
『泣かないで、大丈夫だよ。お母さんはどこかな?』
センリは少年の頭を撫でながら素早く、そして優しく問いかける。
「お母さん…警務…部隊…−−」
少年はしゃっくりあげながらもセンリを見て答えた。
『それならきっとみんなを誘導してるはず…−−君、避難場所は分かる?』
泣きじゃくりながら少年は何度も頷き、センリは安心させるように微笑んだ。
『お母さんはみんなを助けてくれてるから。君はきちんと自分の事を守るんだよ、出来る?−−よし、えらいぞ!』
センリは少年を現場からは逆の方向へと促す。
その他の立ち竦む人々は、気にかけていられなかった。
九喇嘛の鳴き声と女の泣き声、そして叫び声や怒号やらが飛び交って耳が痛い。しかしそんな事に構ってはいられずセンリは九喇嘛を目で追いかけながら必死に走った。
その時九喇嘛の口が大きく開かれ、そこに薄黒い高密度のチャクラが集中するのが分かった。
『(まずい…!尾獣玉……!)』
九喇嘛が尾獣玉を向ける先に目を凝らすと、火影岩の上にミナトの姿らしきものが見えた。そして九喇嘛が放った尾獣玉が火影岩に衝突する前に突然消えた。
そして数秒後にドオォンという爆音が遠くの方から聞こえてきた。
『(飛雷神で飛ばしたんだ…!)』
里から遥か離れた所から聞こえてくる音にセンリはすぐに理解した。しかしそう何度もうまく攻撃を回避するのは困難だ。
『(フガクのところに…!)』
センリは少し経路を変えて警務部隊本部まで急いだ。
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