木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-新しい命-
ミコトが二人目を妊娠したという報告を受けてからしばらくすると、今度はクシナからおめでたい事を聞かされた。
『―――えっ、ホントに?』
「ホントだってばね!」
「センリ様、本当ですよ。予定日は…十月十日だそうです」
ミナトとクシナの間にも新しい命が宿り、センリはその報告に目を輝かせた。
『わあお!!やったね二人共!これでクシナとミナトもママとパパになるのかあ…!』
「そう!母親だってばね!」
『クシナが!』
「母親!」
クシナも嬉しさを隠しきれない様子でいつもよりはしゃいでいた。センリとクシナは顔を見合せてきゃあきゃあ喜び合った。
『戦争が終わってから、おめでたい事続きだ!』
「いい事だってばね!ミナトは火影になったし、赤ちゃんも……」
クシナはいとおしそうに、少しだけ出てきた自分の腹を撫でる。その顔はもう母親のもので、それを見守るミナトも父性愛に溢れている事にも気付き、センリは更に嬉しくなった。
「早く二人に見せてあげたい!」
『私とミナトは同じ立ち位置でいいの?』
センリはクスクスと笑ったが、クシナは至って真面目な表情で何度も頷いた。
「私の存在を認めてくれた二人には…一番に見てほしいから」
ミナトとセンリは目を丸くして顔を見合わせ、そして笑った。
「私のこの髪を綺麗だって褒めてくれたのは二人だけだから…大切な存在なんだってばね」
「そうなんだ…。センリ様も、クシナの髪を褒めていてくれたのですね」
『当たり前だよ!うずまき一族の人達は、綺麗〜な赤い髪の人が多いから!』
センリの微笑みには何故かミナトの方が安心した。愛する人を共に大切に思ってくれている存在があるというのは、どこかこそばゆく、そして幸せな感覚だった。
『クシナ、お腹、撫でてもいい?』
「もちろん!」
センリはにっこりしてクシナのお腹に手を当てた。暖かく張りがあり、それでいてやわらかな膨らみだった。新しい命の、感触だ。
『おーい、聞こえるかなー?お……お父さんだよー!』
センリは口元に手を当て、クシナのお腹に向けて冗談っぽく言った。
「センリ様!これで生まれてくる子がセンリ様を父親だと勘違いしたらどうするんですか!」
「じゃあ、お父さんが二人ってことでいいんじゃない?」
『ナイスアイデア!』
三人は楽しくなり、笑い合った。まだ見ぬ命の誕生が、心から待ち遠しかった。
『生まれてくる子の髪は、どっちに似るかなあ』
「オレンジ色かもしれないですよ」
『まっ、まさか…!赤と黄色を足して――!』
『「オレンジ!」』
「ミナト、センリ、それはないってばね」
ミナトとセンリが真剣に話し合うので、クシナは笑って突っ込みを入れた。
もしも生まれてくる子の髪が赤だったとしても、自分のように悩む事は無いだろうと、クシナは一人考えて嬉しくなった。自分が大切に思う存在達は、生まれてくる子どもを心から大事にしてくれるだろう。その未来を思うと、あたたかい感情だけがクシナの胸いっぱいに広がっていた。
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